(社会新報3月8日号3面より)
発がん性だけでなく、生殖や免疫の機能への影響などが指摘されている有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)による水汚染が、沖縄県だけではなく東京都内など広範な地域で確認されている。
PFASとは、PFOS、PFOAなど4700種類あるとされる有機フッ素化合物の総称。分解されにくく蓄積されやすいことから、「永遠の化学物質」と呼ばれる。テフロン加工のフライパンなど生活雑貨をはじめ、半導体の製造工程などで多岐に使用される。特に基地での消火訓練に使われる泡消火剤に多く含まれる。
米国防総省の資料などによると、PFOSとPFOAの排出が確認されたりした米軍関係施設は20年時点で628施設に上る。
米国環境保護庁は昨年6月、PFASの健康勧告値を大幅に引き下げ、1リットル当たり、PFOSが0・02ナノグラム、PFOAが0・004ナノグラムとした。1ナノグラムとは1グラムの10億分の1。
ところが、日本では健康への影響基準がなく、水道水や河川などに関する暫定目標値は1リットル当たり50ナノグラム以下とされている。米国とは比べものにならない。
汚染が最も深刻なのは沖縄だ。嘉手納基地、普天間基地、キャンプハンセンなど米軍施設周辺の井戸水や北谷浄水場の飲料水などから、高い数値のPFASが検出されている。
米軍横田基地周辺の東京・三多摩地域でも深刻だ。都が同地域にある11の浄水施設で高濃度のPFASを検出し、34本の井戸の取水を停止していたことが、先ごろ判明している。
市民団体が今年1月30日、国分寺市など三多摩地域住民の血中濃度検査結果を発表。87人のうち74人が米国の学術機関が設定した指標値を超えていた。
米軍は泡消火剤漏出事故を繰り返しながらも、日米地位協定を理由に日本側による基地内立ち入り調査を認めず、情報も開示しない。
バイデン米政権は2021年、「PFAS戦略ロードマップ」を公表し、汚染除去対策などに100億㌦(約1兆3000億円)を投入し、米国内の本格的な規制に乗り出している。
一方、日本では今年1月、PFASをめぐる包括的な対応策の検討に入ったばかり。命と健康に関わる重大問題をこれ以上放置することはできない。日本政府は一刻も早く抜本的対策に乗り出すべきだ。
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