(社会新報2021年7月28日号3面より)
7月13日、大阪地裁で全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(以下、関生支部)の武建一委員長への判決が言い渡された。
この日は、8時半から座り込み集会が行なわれ、真夏のような日差しの中、大阪のみならず遠くは北海道など全国から400人以上の支援者が地裁前に結集した。韓国民主労総建設労組のイ・ヨンチョル委員長とも電話をつなぎ、「正しい闘いだからこそ、当たり前の闘いだからこそ、われわれの闘いは絶えることなく前に進んでいく」とのメッセージに国際連帯を確認した。
その後、30数席の限られた傍聴席を求め、地裁敷地内に移動すると、大阪広域生コンクリート協同組合(以下、大阪広域)から動員されたスーツ姿の男性たちが大勢集まっていた。配られた抽選券は約700枚。大阪広域の動員数よりも支援者数がはるかに上回った。
判決は、①大阪ストライキ事件(威力業務妨害)②滋賀県・フジタのコンプライアンス活動事件(恐喝未遂)③タイヨー生コン事件(1000万円の会館建設カンパに関する件/恐喝) の3つの事件を併合したものだった。検察の「懲役8年」という重い求刑に対し、判決は、「懲役3年、未決参入190日、執行猶予5年。恐喝については無罪」というもの。事件の構図が崩れた。日本の刑事裁判の有罪率はほぼ100%。実刑判決もあり得ると覚悟し、収監の準備もしていた支援者たちは、「予想外の展開」に大きく胸をなで下ろした。納得できなかったのは大阪広域の幹部たちだ。彼らは聞こえるような声で何度も不満の声を漏らした。
実刑にはならなかったものの、裁判官の産業別労働組合に対する理解は、あまりにもお粗末なものだった。①の大阪ストライキ事件に関しては、「雇用関係がない相手に対する団体行動は正当な組合活動と判断される余地がない」とし、17年12月のストライキを威力業務妨害と決めつけ、武委員長を「指導者としての責任は重大」と非難した。
労働者と中小企業が大同団結して生コン価格を大幅に引き上げたにもかかわらず、それが生コン輸送運賃や労働者の雇用などに反映されなかったことで、ストライキに至ったわけだが、その経緯については一切言及しない。武委員長の実刑を跳ね返したのは運動の成果だが、憲法28条、とりわけ団体行動権を全否定する判決が労働運動に与える影響は大きい。
裁判所から出てきた武委員長は、大きな拍手で支援者らに迎えられた。マイクを握った途端に、そこにいる人々を鼓舞するかのように話し始めた。企業内労組しか労働組合として認めない、世界のスタンダードである産業別労組に対する裁判官の無知・無理解を指摘し、原発、辺野古基地問題、憲法改正国民投票法に賛成した野党のことなどに触れ、「政治を変えよう」と呼びかけた。「これからも断固ストライキで闘う」との宣言に、賛同の声と大きな拍手が起きた。組合は即日控訴。労働三権を守るために徹底して闘う姿勢だ。