(社会新報2021年10月6日号1面より)
憲法違反の集団的自衛権行使を認める戦争法(安保法制)が強行成立されて丸6年を迎えた9月19日、国会正門前で、同法の廃止と立憲主義の回復を求め、自公政権の退陣と総選挙勝利を訴える行動が展開され、オンラインで配信された。オンライン視聴者を含めて約1000人が参加。総がかり行動実行委員会と「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が共催した。
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主催者を代表して、「憲法9条壊すな!実行委員会」の菱山南帆子さんがあいさつし、「自公政権に私たちの命とくらしと尊厳を守ることは期待できない」と厳しく批判した。その上で菱山さんは、「私たちは6年前から市民と野党の共闘を育ててきた。野党4党と市民連合との政策合意が実現した。画期的な合意を力に一つの塊になって、政権交代を実現しよう」と声を上げた。
排外主義を許さない
立憲野党から社会民主党、立憲民主党、日本共産党の3党から連帯のあいさつがあった。社民党の福島みずほ党首はビデオメッセージの中で、「コロナで人々の命が軽く扱われていることに本当に怒りを感じる。戦争に向かう政治を止めよう。『平和と平等は手を携えてやってくる』という言葉がある。正反対に『戦争と差別排外主義が手を携えてやってくる』。さまざまな排外主義と人権侵害を許してはならない」「この6年間の市民と野党の連帯が深まってきた。野党と市民の力で生存のための政権交代を実現し、戦争法を廃止しよう」と訴えた。立民の菅直人元首相、共産党の田村智子副委員長もスピーチした。
続いて、戦争法に反対して闘ってきた5つの市民団体の個人らが発言した。
「立憲デモクラシーの会」の石川健治・東京大学教授(憲法学)は「2014年7月、集団的自衛権に関する憲法解釈が安倍政権の人事の力によって変更され、憲法論議の土俵そのものが壊された」と振り返った。そして「ロマン・ロランによれば『非政治的な人間であっても連帯すべき時がある』という。私のような者でも立ち上がらなければならない」と述べた。
「安全保障関連法に反対する学者の会」の高山佳奈子・京都大学教授(刑法学)は、アベノマスクについて取り上げ、「巨額の税金が浪費された。いつから日本はこんなに愚かになったのか。背景に学者の専門知を生かす仕組みの破壊がある」と批判。「国家公務員は半減され、忖度(そんたく)する人が残り、本来の統治機構の機能が失われた」と指摘した。
一人ひとりが汗かく
戦争法制定時に学生としてこれに反対して闘った元シールズの元山仁士郎さんは、「琉球列島では再軍事化が進み、かつての沖縄戦への道のりを進んでいる」と危惧し、「政権交代で『野党頑張れ』と言うだけでなく、私たち一人ひとりが汗をかかなければならない」と強調した。
「安保関連法に反対するママの会」で医師の高岡直子さんは「目の前に人が溺れているのに船も出さない。そんな冷たい政治家に任せていては国全体が溺れてしまう」と政府のコロナ対策を糾弾した。
市民連合事務局の福山真劫さんは、「市民連合がこの6年間に47都道府県で発足し、小選挙区で200が結成された。9月8日には市民連合と4野党が6大項目と個別20項目の政策協定を結んだ。自公政権打倒で共に頑張ろう」と訴えた。
最後に、総がかり行動実行委の小田川義和・共同代表が行動提起で、「市民と野党の共闘は前進し、政権交代を目指すところまできた。これから1ヵ月半、力を合わせる時だ」と訴えた。
↑主催者を代表して菱山さんがアピールした(9月19日、国会正門前)。
暴走する危険性のある国家を縛るために憲法が存在し、憲法に従って国家の運営を行なうという考え方のこと。戦前の大日本帝国憲法(明治憲法)では、主権は天皇にあり、臣民の権利・自由は法律によって制限が可能であったため、大日本帝国憲法は「外見的立憲主義憲法」と言われた。これに対して、現・日本国憲法では、主権は国民にあり、多数派によっても人権を奪うことはできないとし、「実質的立憲主義憲法」と言える。98条(最高法規)や81条(違憲審査制)、99条(公務員の憲法尊重擁護義務)、96条(厳格な憲法改正規定)などと、国家権力から憲法を守る規定が盛り込まれている。