2021年12月24日
社会民主党 幹事長 服部良一
- 政府は12月24日の閣議で、2022年度予算案を決定した。岸田文雄内閣の発足後初めての当初予算案である。一般会計の総額は前年度当初予算と比べて9867億円増の107兆5964億円となり、10年連続で過去最大を更新した。12月20日に成立した2021年度補正予算35兆9895億円と一体的に編成した「16カ月予算」として、新型コロナウイルス禍での積極的財政出動を続ける姿勢を明確にした。
- 日本の国内総生産(GDP) 比の政府債務残高は21年時点で257%と主要7カ国(G7)最悪の水準となっている。本予算案の財源は、その3分の1にあたる36兆9260億円が国債発行に頼っており、例年の予算編成の基本方針で明記されていた「聖域なき歳出改革」の文言も今回は消えた。コロナ禍という特別な状況とはいえ、無節操な歳出が許されるわけではない。裏付けとなる財源についても十分な説明を求めたい。
- 人口の多い「団塊の世代」(第一次ベビーブーム世代)が75歳以上の後期高齢者になり始めることもあり、社会保障費も過去最大の36兆2735億円となった。「世代間の公平性」を名目に、22年10月から一定の収入のある後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる負担増が盛り込まれている。「一定の収入」は単身の場合で約200万円という水準であり、多くの高齢者が該当する。高齢者の「受診控え」を招くことは必至でありとうてい容認できない。
- 防衛費も583億円増の5兆4005億円が計上された。2010年度以来12年ぶりに国内総生産(GDP)比1%を超え、1・1%となった。21年度補正予算の7738億円とあわせ6兆1743億円に及ぶ大幅な軍拡予算だ。補正予算に前倒し計上するなどして生まれた余裕を使い、大幅な機能強化をはかるものだ。南西諸島の防衛力増強、F35戦闘機の追加取得、護衛艦や潜水艦の建造、ミサイル能力の強化など従来領域での軍拡に加え、次期戦闘機の開発宇宙戦能力の獲得、サイバー部隊や電磁波領域の能力強化など、まさに大盤振舞いである。補正予算に大規模な支出を紛れ込ませる「15カ月予算」、「16カ月予算」といった手法が常態化していることも、緊急性を要件とする財政法の補正予算の趣旨からみても許されない。
- 沖縄関係予算は2684億円と本年度から11%、326億円の大幅減となった。3000億円を割り込むのは12年度以来である。中でも使途の自由度が高い一括交付金は219億円減の762億円と大きく削減された。一般会計の総額が10年連続で過去最大となったことと対照的であり、辺野古新基地建設問題などで政府に抵抗する沖縄県に対する懲罰的な意図が透けて見える。コロナ禍で大きく落ち込んだ県経済の再生が求められる中で、せめて例年並の予算を確保するのは当然だ。予算で地域を分断し揺さぶりをかけるのは理不尽であり、とうてい容認できない。
- 一方で、日米両政府は2022年度から5年間の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)を、総額1兆551億円とすることで合意している。年平均では約2100億円で、21年度比で約100億円の増額だ。国の借金が膨らむ中で、米国の言うままに軍事支出を拡大する余裕はない。日米同盟強化は両刃の刃であり対抗する相手国の軍備増強をあおる面もある。対米追従から抜け出し、外交による緊張緩和の取り組みが求められている。
- 岸田首相は「新しい資本主義」を掲げ、この予算を「成長と分配の好循環による新しい資本主義を実現するための予算」と説明しているが、具体的な中身のほとんどは従来からの継続する決して新しくはない施策である。賃上げ税制の拡充を「分配戦略」の柱としているが、安倍政権時代の政策との違いは見えない。「好循環」を起こせなければ、一部で若干の賃上げが実現したとしても一過性で終わるだろう。
- 予算案は年明けの通常国会に提出され審議に入る。税金の取り方と使い方は国の形を決める基礎であり政治の最重要な課題である。コロナ禍や「厳しい安全保障環境」を理由にすれば、なんでも許されるかのような安易に肥大化した予算案の内容には疑問を持たざるを得ない。社民党は、市民の生活に寄り添い、いのちと暮らしを守り抜くための2022年度予算とするため、全力で国会論戦にのぞむ決意である。
以上