2023年3月2日10:00から開催された衆議院憲法審査会の自由討論において、新垣クニオ(沖縄2区選出)が発言しました。発言全文とその様子を公開します。
発言全文
立憲民主党・無所属会派、社民党の新垣クニオです。
先ほど同僚の吉田はるみ委員から「平時においても国会は機能していない」との指摘がありました。この点について、私からも最近の具体例を述べます。 岸田総理は、今回の安保関連3文書の改定について「戦後政策の大転換」と繰り返し発言しています。それほど重大な政策判断を下したにもかかわらず、事前に国会で説明することすらなく、臨時国会閉会後に閣議決定し、通常国会での議論を待たずにアメリカのバイデン大統領と約束し、既成事実化してしまいました。
このプロセスについて、河野洋平元自民党総裁は、共同通信の記事インタビューの中で、「戦後日本の国柄を変えるほどの重大な政策転換なのに、国民に諮ったことは一度もない」と批判しています。そのうえで、「驚いたのは、閣議決定後に国会に示し、議論するかと思ったら、岸田文雄首相はワシントンに飛んでバイデン大統領に報告し『米国は大変喜んでくれた』と言って帰ってきたことだ」とも批判しています。
戦後政策の大転換を決めることができるのは、総理大臣や内閣ではありません。日本国憲法では、国のあり方を最終的に決める権力は主権者である「国民」にあります。岸田政権の今回のやり方は到底、民主主義国家では認められません。岸田総理・総裁はじめ自民党は、このような元自民党総裁の批判にこそ「聞く力」を発揮し、猛省すべきではないでしょうか。
また、今回の安保関連3文書では、政府が集団的自衛権の行使要件の1つとする「存立危機事態」の際にも敵基地等の攻撃が可能である、とされています。日本が直接に攻撃されていなくとも、政府の解釈で存立危機事態であると認定し、自衛隊が先に外国領域を攻撃することは、状況によっては「反撃」ではなく、国際法違反の「先制攻撃」に該当する可能性を否定できず、それは歴代政府の立場である「専守防衛」の逸脱にほかなりません。
そもそも、個別的自衛権のための敵基地攻撃能力についても問題があります。憲法学者らで構成される立憲デモクラシーの会は、昨年12月23日の声明で、「『敵国』が発射するミサイルが日本を攻撃するためのものか否かは、発射された後にしか確定し得ない。『先制攻撃』と自衛のための『反撃』の区分はきわめて不明確であり、敵基地攻撃能力の保有は専守防衛という従来の日本の防衛政策の基本理念を否定するものと言わざるを得ない」と断じています。
歴代政府の憲法的立場である「専守防衛」を逸脱する政策決定を、国会に説明する手続きすら踏まず、閣議決定という形式で行うことは、「立憲主義」そのものを否定するもので、今回の安保関連3文書は、「立憲主義」や「国民主権」の観点から正当化できるものではありません。
戦後政策の大転換である以上、集団的自衛権に基づき敵基地攻撃能力を行使することの合憲性と危険性、あるいは敵基地攻撃能力で懲罰的抑止を行うことと自衛権行使の3要件との整合性などについても、本審査会で議論すべきテーマだと考えます。
森会長、幹事会での協議をお願いします。
去る2月26日の自民党の党大会の場で、岸田総理が「時代は、憲法の早期改正を求めている」と発言し、改憲への強い意欲を示した、と報じられています。
言うまでもなく、総理大臣や内閣は、憲法99条の憲法尊重擁護義務を負います。 臨時国会召集義務違反や性的マイノリティーへの差別発言、沖縄への過重な米軍基地押し付けなど、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という憲法の三大原理すら守っていないのが現政権の実態です。この現状にあって、時の為政者が改憲機運を高める目的で発言することは、二重に憲法尊重擁護義務を踏みにじるものであり、言語道断です。
憲法尊重擁護義務は、私たち国会議員にも課されています。本憲法審査会の持ち方においても、むやみやたらと改憲論議に突き進むのではなく、まずは立ち止まって、立憲主義に根差した政治が行われているか、平和憲法の理念が息づく政治が実践されているか、じっくり議論すべきではないでしょうか。
冒頭で述べたとおり、緊急事態における国会機能の維持よりも急ぐべきは、平時における国会機能の回復です。民主主義、立憲主義に基づく正当な手続きすら踏まず、重大な政策決定を繰り返す政府の国会対応こそ今すぐ是正すべきである、と強く申し上げ、私の意見を終わります。
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