月刊社会民主

もはや「恐怖」を感じる-コロナの下の貧困拡大-

(月刊社会民主2021年6月号)

 

 「だんだんカオスになってきたね…」

 ゴールデンウィーク中に開催された「大人食堂」で、何度か交わした言葉だ。

 コロナによって失業するなどして生活が困窮した人たちにお弁当や野菜、生活用品を配布し、生活、労働、医療相談をするという取り組みだ。都内の支援団体が中心となって、5月3日と5日、東京・麹町の聖イグナチオ教会で開催された。

 2日間にわたって私も相談員をしたのだが、教会の外には食料を求める長い長い行列ができた。ベビーカーを押した母親や、トランクに全財産をつめた男性。若い女性の姿も目立ち、またとても生活に困っているようには見えないような中高年女性も並んでいた。

 3日に訪れたのは210人。雨天だった5日の参加者は448人。

 そんな中、目立ったのは外国人の姿だ。ネパール、ミャンマー、ナイジェリア、エチオピア、トルコ、イランなどなど多くの外国人が食品を受けとり、医療相談や生活相談の列に並ぶ。多くがさまざまな理由から在留資格が切れるなどして働くことを禁じられている。だが、日本の社会保障の対象にもならない。「働くな。だけど何の保証もしない」という生殺し状態の人々である。

 「だったら、自分の国に帰ればいい」と思う人もいるだろう。だが、難民申請中で帰国したら命に危険が及ぶ人もいる。また、帰国したくても帰りの飛行機代を工面できない人もいる。働いてチケット代を稼ぎたくても就労は禁じられているからだ。これまで外国人コミュニティの中で助け合ってきたが、コロナ禍でそれも限界、という人々が押し寄せたのだ。

 日本人の相談も、1年前と比較してより深刻になっている。食事にも事欠き、激痩せしたという人もいれば、住まいを失い、その場から支援者と共に生活保護申請に行った人もいる。共通するのは、コロナ以前から崖っぷちの状態にいたということだ。多くが非正規で貯金もなく、ギリギリの生活だった。綱渡りのようになんとか続けてきたその生活に、コロナがトドメの一撃を与えた形だ。

 大人食堂の主催団体のひとつ、「新型コロナ災害緊急アクション」では、昨年4月から今に至るまで700件のメール相談を受け、また2000件に緊急生活費給付をしている。その額、6000万円。

 民間のボランティア団体がここまでフル稼働している異常さを、国は、政治は恥じてほしい。そう言い続けているが、状況は悲しいくらいに変わらない。いつまで続くのか、最近は恐怖すら感じている。

 

あまみや・かりん

1975年、北海道生まれ。不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に関わり、取材、執筆、運動に取り組む。メディアなどでも積極的に発言。

 

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