社会新報

ミャンマー軍の資金源を断て-国連大学前集会で民主化求め熱い訴え-

(社会新報2021年6月9日号1面より)

 

民主化指導者アウンサンスーチー氏の写真や各民族の旗を掲げて、軍によるクーデターに抗議――。今年2月にミャンマー(ビルマ)で起きたクーデターから3ヵ月経った去る5月1日、東京・渋谷区の国連大学前で、在日ミャンマー人たちが集会を行なった。集まった約200人は、スーチー氏ら民主化指導者の解放を訴えたほか、日本政府に対しても、ミャンマー国軍へ強い姿勢で臨むよう求めた。

「コロナ禍の中、このように大勢で集まっていただき、すみません。でも私たちは今、どうしても声を上げなくてはいけないのです」

集会の開会あいさつで、ミャンマー人女性が日本語で集会への理解を求めた。

国際社会の非難にもかかわらず、ミャンマー国軍による暴力は続いている。在日ミャンマー人の人々も、現地の状況をSNSで発信している。軍当局に拘束されたデモ参加者たちは、女性でも顔の形が変わるほど激しく殴られ、性的暴行を受けているという。さらに、北西部チン州では空爆も行なわれ、死傷者が増加しているのだという。

こうした情報発信やデモへの参加は、日本にいても危険を伴う。ある在日ミャンマー人女性は、本紙記者に「軍は日本のミャンマー人の動向も監視している。私自身、とても怖いし、現地にいる家族のことも心配。それでも、やはり黙っているわけにはいかない」と話した。

 

少数民族の旗も揚げ

一方で、国軍への抵抗はミャンマーの人々の意識も変えつつある。国連大学前の集会では、スーチー氏率いるNLDの旗の他に、各少数民族の旗も掲げられた。日本の1・8倍の国土に約5400万人が暮らすミャンマーは、全体の7割を占めるビルマ民族以外に、大きく分けてカレン、シャン、モンなどの民族グループがあり、細分すると135にも及ぶ少数民族が暮らす多民族国家だ。

クーデターを受け、NLDなどの民主化勢力は新たにNUG(国民統一政府)を結成。少数民族の代表も「閣僚」として参加するなど、これまでのミャンマーでの民主化運動に比べて、各民族の融和により重きを置いている。

NUGは国際社会に対し、同組織こそが正当なミャンマー政府であることを承認するよう求めており、国連大学前での集会でも、「国連はNUGを直ちに認めろ」とのコールが繰り返された。日本政府もまだNUGを正式な政府として認定していないが、NUG側によれば、欧米諸国や一部の中東諸国が認定する見込みだという。

 

ODAすべて止めて

国連大学前での集会では、東南アジアの環境・人権問題に取り組むNGO「メコン・ウォッチ」の木口由香事務局長もマイクを握った。

「日本は(対ミャンマー開発支援として)1兆円以上を約束しているが、今の状態ではミャンマーの皆さんの役に立たない。日本政府に、いったん対ミャンマーODAを止め、それらの事業が国軍とつながりがないか調査してほしいと3月初めから言っているが、きちんとした答えがない」

日本は、安倍政権時の2016年に5年間で8000億円規模の対ミャンマー支援を行なうと決定。その後も外務省は新たに対ミャンマー円借款を次々決定している。

だが本紙記者がJICAに確認したところ、日本の対ミャンマー支援は民主化が前提とのことだ。

つまり、今回のクーデターでその前提が崩されたのである。それにもかかわらず、日本政府は対ミャンマーODAの停止に後ろ向きだ。

 

麻生氏ら軍資金支援

民間の投資、貿易の拡大など、ミャンマーと日本の経済交流を推進する一般社団法人「日本ミャンマー協会」の役員には、最高顧問として麻生太郎元首相、理事長代行として古賀誠元自民党幹事長、理事に甘利明自民党税制調査会長など、大物政治家が名を連ねる。さらに三菱商事の元会長、丸紅の名誉理事、住友商事の特別顧問らも役員だ。日本の「政治とカネ」も、ミャンマー国軍を支えてきたのである。だからこそ、日本の市民はミャンマー情勢を注視し、民主化を求める人々を支援する必要があるだろう。

 

↑アウンサンスーチーさんのポスターを掲げる在日ミャンマー人女性ら(5月1日、東京都渋谷区の国連大学前。)

 

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