社会民主党の福島みずほ党首は衆議院選挙の公示の前日である10月18日、東京・内幸町で日本記者クラブ主催の与野党9党の党首討論会に出席し、新自由主義に代わる社会民主主義政策の必要性を訴えた。
各党党首は、多様性や外交・安全保障、政治の信頼回復などの争点について白熱した論戦を交わした。
福島党首は「一番訴えたいこと」として「生存のための政権交代」と書いたフリップを掲げ、次のように政策を端的に述べた。
「社民党は命、暮らし、人権を守る。生存のための政権交代を訴える。新自由主義から社会民主主義的政策への転換を何としてもしなければならない。税金の取り方と使い道を変える。3年間、消費税をゼロにする。大企業の内部留保484兆円に課税をする。ジェンダー平等(男女平等)を実現し、LGBT(性的少数者)を含めた多様性のある社会を。気候危機を乗り越えるため、脱炭素・脱原発の社会を実現する」
福島党首は岸田文雄首相(自民党総裁)に対して次のように厳しく質問した。
「首相は所信表明演説で新自由主義は富める者と富まざる者との深刻な分断を生んだと述べた。しかし、大企業や富裕層への課税強化をなぜ言わないのか。いったん主張した金融資産課税をなぜやめるのか」
これに対して岸田首相は、新自由主義政策では富が一部に偏り、トリクルダウンも起こらなかったことを認めたものの、課税問題には言及を避けた。
病床削減法の撤回を
さらに福島党首は「非正規雇用に歯止めをかけ、正規労働に道を開く労働法制の改正をやる気があるのか」「公立病院・公的病院の再編統廃合の436のリストを撤回するのか。病床削減の法律を撤回するのか」と鋭く続けた。これに対しても岸田首相からは明確な回答はなく、曖昧な逃げの答弁に終始した。
そして福島党首は「唯一の戦争被爆国である日本は核兵器禁止条約になぜ批准しないのか。沖縄辺野古新基地建設をなぜ強行するのか。辺野古沖は軟弱地盤で工事はできない。沖縄南部戦跡の遺骨を含む土砂を辺野古新基地に使うことは、沖縄の心を踏みにじる行為だ。なぜやめないのか」と怒りを込めて質問を突きつけた。これに対して岸田首相は、被爆地・広島選出にもかかわらず核禁条約批准を避ける理由についての答弁を避け、曖昧な言辞を弄(ろう)するばかりだった。
多様性に消極的な自民
特徴的だったのは、選択的夫婦別姓を認める法案を来年の通常国会に提出することへの賛否を挙手で問われた際、岸田文雄首相(自民党総裁)だけが賛意を示す挙手をしなかったこと。他の8党党首は賛意の手を上げた。同様に、LGBTへの理解促進法案を来年通常国会に提出することについても、岸田首相だけが賛意を示さなかった。多様性に極めて消極的な自民党の姿勢を浮き彫りにした。