(『社会新報』2021年12月15日号3面【主張】より)
「新しい 資本主義にも 化石賞」。本紙の川柳欄にこんな一句が載った。岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」とは何を目指すのか、全く見えないからだ。
6日に召集された臨時国会での岸田首相所信表明演説でも、「新しい資本主義」の無内容さが浮き彫りとなった。演説は新型コロナウイルス対策や経済、社会保障、外交、安保などの課題を総花的に並べたにすぎなかった。
「新しい資本主義」の説明で、新自由主義で格差や貧困が拡大したとして、「新しい資本主義」の具体化で「成長も分配も実現する」と強調した。
ところが、自民党総裁選で掲げていた「令和版所得倍増計画」や金融所得課税強化などには一切触れず、「分配」が「成長」の後ろに追いやられてしまった。
総裁選まではアベノミクスを修正して「分配」重視の姿勢を示したものの、首相就任後は一転、「成長と分配の好循環」と曖昧化した。分配政策として掲げたのが、給与を引き上げた企業への税制支援の強化であるが、インパクトが全くない。成長戦略として、技術革新やデジタル化の推進などを列挙したが、従来の政権の延長線上のものばかり。
「新しい資本主義」で社会をどう変え、どのような理念で未来を構築するのか、具体像を何も語っていない。
一方、所信表明で突出したのは、「敵基地攻撃能力」を明言したことだ。国家安全保障戦略の改定と併せ、弾道ミサイル発射を相手国領域内で阻止する攻撃能力の保有検討を強調した。
「敵基地攻撃能力」は先制攻撃を意味し、憲法や国際法に明白に違反する。禁じ手である「敵基地攻撃能力」の表現を、軽率にも所信表明で使うこと自体、極めて危険だ。しかも、岸田首相は先制攻撃=「敵基地攻撃能力の保有」に関し、「あらゆる選択肢を排除せず」「スピード感をもって」とまで言い放った。
6年前に安倍政権は憲法で禁じられた集団的自衛権の行使を容認する戦争法(安保関連法制)を強行したが、先制攻撃論はこの延長線上の暴挙である。
さらに、所信表明の最後に「憲法改正」を強調した。改憲への「国民理解のさらなる深化」を呼びかけた。自衛隊を憲法9条に書き込むことや緊急事態条項を盛り込むことが真の狙いだ。
社民党など護憲平和勢力は岸田政権の改憲策動を打ち砕くために全力を尽くして闘う決意だ。
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