社会新報

【主張】COP27が閉幕~「損失と損害」めぐり歴史的な合意

(社会新報11月30日号3面より)

 

 エジプトで開かれていた国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が、「シャルム・エル・シェイク実行計画」に合意して閉幕した。予定された会期を2日延長し、夜通し交渉した結果の歴史的な合意である。
 COP27では、近年の気象災害の激甚化を背景に、気候変動の影響に対して脆弱(ぜいじゃく)な島しょ国など途上国側が求めた「損失と損害」が主要議題となった。当初、先進国側は、損害の補償を要求するような枠組みには応じられないとの姿勢だったが、会議の終盤で歩み寄り、基金創設に合意した。
 1995年にCOPが始まって以来、温室効果ガスを無制限に排出しながら発展を遂げた現在の「先進国」と、温暖化の被害を集中的に受けながら排出制限だけを求められる「途上国」の対立は、大きな課題であった。基金に関する具体的な決定の多くは来年に持ち越され、「移行委員会」が「財源の特定と拡大」を勧告し来年のCOP28での採択を目指すことになる。
 アフリカは記録的な干ばつに見舞われており、パキスタンの洪水被害は国土の3分の1に及んでいる。温暖化との因果関係は必ずしも明確ではないが、巨大な気候災害への対応は、国際社会にとっても喫緊の課題だ。今回の合意を一歩として、建設的な議論をすすめ、有効に基金を活用する仕組みを整備していきたい。
 一方で、排出削減や化石燃料の使用削減に向けた取り組みは、昨年のCOP26での「グラスゴー気候合意」の内容を踏襲するにとどまった。提案されていた石炭使用削減の明確な実行も、全化石燃料の段階的廃止に向けた明確な約束も盛り込まれなかったことは残念だ。低排出エネルギーの拡大に言及していることから、天然ガスの使用増大に道を開くのではないかとの懸念も出されている。「グラスゴー気候合意」では、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1・5度に抑えることを目標としているが、現在の各国の目標を足し合わせても、とうてい達成できない。さらなる取り組みの強化が必要だ。
 ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアの天然ガスに依存していた欧州では石炭や原子力に回帰する動きも強まっている。世界的にエネルギー価格が高騰する中で温暖化対策どころでないという雰囲気も広がる。各国が結束し、温暖化問題に取り組める環境を早急に取り戻さなくてはならない。