社会新報

難民保護の法制度を~福島党首と指宿弁護士が対談

指宿昭一弁護士

福島党首(右側)と指宿弁護士が熱く語り合った。

 

(社会新報7月19日号1面より)

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 社民党の福島みずほ党首は、入管問題に取り組む指宿昭一弁護士と対談し、先の国会で成立した改悪入管難民法の審議や今後の対策などについて語り合った。
               ◇
 福島みずほ党首 2年前に入管法改悪法案が廃案になり、ほぼ同じ骨格のものが今回出てきて、残念ながら強行成立したのですが、これをどう見ていらっしゃいますか?

負けた感じがしない

 指宿昭一弁護士 法案が成立したのは、とても残念だし、強行採決をした与党に対しては強く抗議をしたいと思っています。ただ、立法事実が本当にガラガラと崩れた。そこまで市民と野党議員連携で追い詰めた。これはすごく大きな成果だと思いますし、成立した時にも負けた感じはしませんでした。もちろん勝ったわけではないんだけど、あんなぶざまな強行採決をせざるを得なかった政府与党入管の方が負けたんだと私は思っています。
 福島 参院の法務委員会のメンバーで立憲民主党の牧山ひろえさん、石川大我さん、そして社民党の私、それから共産党の仁比聡平さんという入管法改悪反対の4人組で力を合わせて、もちろん他のれいわや沖縄の風の人たちともですが、あと市民社会が若い人を中心にすごい頑張りましたよね。国会の審議では、立法事実が無残に壊れていくのを目の当たりにしました。とりわけ、難民認定審査で、一番初めの審査は入管の職員、難民調査官がやり、不服申し立てされたものを、難民審査参与員が審査するわけですが、それに常設班と臨時班があることも初めて分かりましたよね。
 指宿 難民審査参与員の臨時班は、うわさとして、あるんだろうなとは言われていたんですけど、ここまでリアルな形で明らかになったのは初めてだし、その臨時班の実態も本当にもう審議時間かけないでやっている。(難民審査参与員で、その発言が立法事実とされた)柳瀬房子さんが、年間で1000件も審査をやっている、柳瀬さんには審査全体の4分の1近くが割り振られているのに対し、日弁連の推薦の参与員などは年間に1件だったり、0件だったり、そういうおかしな実態、参与員は公平中立だなんて言ってるけど、それをコントロールしているのが入管で、本当にその難民を認定したくない入管の思惑どおりに制度が運用されていることがはっきりと明らかになったと思います。

臨時班のずさん審査

 福島 参与員制度を見事に骨抜きにしてきた実態ですよね。111人いる参与員のうち、臨時班の13人に書類審査だけで、どんどんベルトコンベアみたいにやらせるのか、常設班できちっと対面審査もやるのかという割り振りも入管が決めているのですよね。
 指宿 入管が二次審査も仕切っていることは、二次審査の意味をなさない。つまり、適正手続きが日本の難民認定制度では全く機能していないことが明らかになったと思います。
 福島 先ほど、指宿さんがぶざまとおっしゃったけれども、例えば、「柳瀬さんの発言を見ると1年半の間に500件対面審査をやっていた結論になる。これは可能なのか」と記者に会見で聞かれて、齋藤法相は「可能です」と答えて、その日の夜に「あれは『不可能だ』の言い間違いだ」と言い直した。これもひどかったですね。
 指宿 「可能」とすると、法相自身が虚偽の追認をしたことになるから、さすがにそれはまずいと撤回した。でも、それはつまり、今度は柳瀬さんがうそを言ってたことを認めたことになるので、二重におかしなことになる。これだけで法案の審議は絶対にストップするべきでしたし、(不信任決議を出された)法相も自分で辞めてほしかったですね。
 福島 かつては虚偽答弁で、大臣が辞任したり、内閣が吹っ飛ぶなど、大変問題になったこともあるんですよね。だから本当にあり得なくて、なぜ柳瀬発言を問題にするかというと、法案の趣旨説明や審議会の冒頭で、柳瀬さんの「難民認定したいのだけど難民申請者の中にほとんど難民がいない」という言葉を受け止めてそれが立法の根拠になっている。そして、それを入管の次長も法務大臣も繰り返し、法務委で柳瀬発言に沿って答弁しているのですよね。
 (文責は編集部。詳しくは『月刊社会民主』8月号に掲載されます)。

 

 メモ【改悪入管難民法】6月9日、参院本会議で自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の賛成多数で成立した。主な内容は、①難民認定申請中でも3回目からは強制送還の対象にする②送還を妨げる行為などに刑事罰を科す③収容の代わりに支援者らの管理下に置く「管理措置」を導入④施設収容中は3ヵ月ごとに収容の必要性を見直す⑤ウクライナなどの紛争地からの避難民を難民に準じて保護するーーなど。来年7月に施行。

いぶすき しょういち 弁護士。1961年、神奈川県生まれ。85年、筑波大学比較文化学類卒業。2007年、弁護士登録。同年、暁法律事務所を設立し所長に就任。外国人技能実習生問題弁護士連絡会共同代表、外国人労働者弁護団代表などを兼務。「生存のためのコロナ対策ネットワーク」メンバー。米国務省から人身売買と闘う「ヒーロー(英雄)」に選ばれる。著書に『使い捨て外国人 人権なき移民国家』(20年、朝陽会)など。