同性婚認めぬ法制度は「違憲状態」~東京地裁判決、国会に立法措置を促す
(社会新報12月14日号1面)
東京地裁は11月30日、同性婚の法制化を求める「結婚の自由をすべての人に」東京1次訴訟について、同性婚が認められないことは憲法違反ではないが同性カップルが家族になる法制度が存在しない現状は「違憲状態」だとする判決を言い渡し、賠償請求を棄却した。原告側は控訴する方針だ。
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原告側は、同性間の婚姻を認めない民法や戸籍法の諸規定が憲法14条1項(法の下の平等)や24条1項(婚姻の自由)、同2項(個人の尊厳と両性の平等)に違反していると主張。憲法14条1項に違反とした21年3月の札幌地裁判決、いずれも合憲とした今年6月の大阪地裁判決と対照的な2つの先例があり、3例目の東京地裁判決が注目を集めていた。
24条2項の違憲状態
東京地裁判決は婚姻が「伝統的に、男女の生活共同体として子の看護養育や共同生活等の維持によって家族の中核を形成するもの」と捉えられ、その社会的承認の背景が「夫婦となった男女が子を産み育て、家族として共同生活を送りながら、次の世代につないでいくという社会にとって重要かつ不可欠な役割を果たしてきた」ことにあると指摘。この社会通念を前提として憲法24条1項の「婚姻」が異性婚を指すと解するのが相当であるとし、同項には違反しないと結論づけた。14条1項についても、この社会通念が憲法24条1項の「婚姻」に同性間のそれを含まないことを要請しており、「区別取り扱いには合理的な根拠が存するものと認められる」が故に違反ではないとした。
他方で、「家族としての法的保護を受け、社会的公証を受けることができる利益」を婚姻により得られる人格的利益と位置付け、同性愛者が特定のパートナーと家族になるための法制度が設けられていないことは24条2項に「違反する状態にある」と指摘。ただし、法制度の構築が必ずしも同性間の婚姻に限定されず、立法裁量に委ねられていることを理由に違反とまでは言えないと判断した。
原告らの受け止め方
判決後の記者会見では冒頭、上杉崇子弁護団共同代表が弁護団声明を読み上げた。声明は、「違憲状態」にあると言い切った点を評価しつつ、立法裁量を理由に違憲と言い切らなかった点について、差別的取り扱いになり得る婚姻以外の制度を認めることになり極めて不当である、とした。
続いて、原告たちから発言があった。大江千束さんは「集中力を持ちながら判決を聞いていた。途中、気持ちが上がったり下がったりした」「憲法24条2項について違憲状態であるということは一歩前進で喜ばしいことだ」と法廷内での心境と判決の受け止めを語り、同じく原告の小川葉子さんも同調した。また、同性カップルが家族を形成する法制度の構築を判決が積極的に肯定している点について、小野春さんは「法律上同性となる家族が存在し、子育てしている家庭もあることを明言してくれている点が嬉しかった。パートナーと3人の子を育てる者として〈その中で養育される子も含めた共同生活の安定〉という言葉を使い、違憲状態の判断をしてくれたのが印象的だ」と手応えを語った。
ただしさんは判決の日を迎えることなく21年1月に逝去した佐藤郁夫さんを思い起こしながらマイクを握り、「ずっと傷つけられてきた個人の尊厳をみんなが取り戻さなければならない。そのための裁判だ。国に家族として公証され、法に守られながら生きていく権利を獲得するための裁判。24条2項についての違憲状態判断はうれしい」と言葉を紡いだ。
弁護団共同代表の寺原真希子さんは「家族という言葉を強調・多用し、同性パートナーが家族になる法制度を構築し、法的に公証されるようにすることが社会的基盤を安定させ、異性愛者も含めた社会全体の安定につながるという言い回しは先行する札幌・大阪と比べて踏み込んだもの」と指摘し、「判決は控訴審で東京高裁に違憲判決を出させるためのトスである」「現行法が違憲状態だと判断されたのだから、国会は速やかに法改正に向けて動きだす義務がある。個人の尊厳を踏まえて、今の婚姻制度を同性カップルも含むものにする方向性が求められる」と立法措置へ期待を語った。
マリフォーが党首に要請
判決言い渡し前日の29日、福島みずほ党首は同性婚の法制化に向けて活動する公益社団法人Marriage For All Japan(マリフォー)と「結婚の自由をすべての人に」訴訟全国弁護団連絡会から「同性どうしの婚姻のための法改正を求める要請書」を受け取った。福島党首は同性婚の法制化に尽力する決意を示した。
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<ことば>【マリフォー】公益社団法人Marriage For All Japanの略称。結婚の自由をすべての人に保障するための訴訟、立法活動などを支援することを目的に、2019年1月22日に設立。21年9月27日に公益法人化。代表理事は弁護士の寺原真希子さんと三輪晃義さん。現在、札幌・東京(1次・2次)・名古屋・大阪・福岡の5ヵ所で取り組まれている6つの訴訟を、運動面から下支えし、各地のプライド・パレードへのブース出展や学習会などのイベントを精力的に展開している。