(社会新報5月31日号2面より)
社会民主党の福島みずほ党首は5月16日、参院法務委員会で、入管法改悪案の立法事実とされる難民審査参与員の発言を鋭く追及した。
難民審査参与員(以下、参与員)は、入管の難民認定審査で「不認定」とされた難民認定申請者が不服を申し立てた際に、その人を難民として認定すべきか否かを法務大臣に助言する。参与員の一人でNPO名誉会長の柳瀬房子氏は、2021年4月の衆院法務委員会で、政府参考人として「申請者の中に難民がほとんどいない」と発言。これが難民認定申請を3回以上、申請した人を強制送還できるようにする今回の改悪案の根拠=立法事実とされる。
年1千件ありえぬ
柳瀬氏はメディアの取材に対し、2021年4月から今年4月までに2000件の審査を行なったとの旨の発言をしている。だが、これに対しては他の参与員たちから「信じられない数」「ちゃんと審査をしているのか?」との声が上がった(全国難民弁護団連絡会議のアンケート調査より)。
福島党首は16日の参院法務委員会で、「1年で1000件っていうのでちゃんとした審査が行なわれるのか」と追及した。これについて、出入国在留管理庁(入管)の西山卓爾次長は「柳瀬氏の処理件数については統計がない」「あくまで一般論」としながら、「年間の受件処理数の高低を持って審理が適切に行なわれているかどうかを判断するのを適切でないと考えている」と答弁した。これに対して福島党首は「調査によれば、参与員の年間の審査件数は平均で36・3件だ」として、対面で丁寧に審査を行なうには、柳瀬氏に、あまりに膨大な件数が集中していることを指摘した。
立法事実が揺らぐ
さらに、「難民審査には、面接もあるし資料を読み込まなくてはいけない。まさに『1年間に1000件で適切だ。別に問題ない』と答えていること自体が問題だ。(申請者の中に)ほとんど難民の人がいない。これは法務省の考え方なのではないか。そういう考え方で改悪法案を作ったのではないか?」と、たたみかけた。
西山次長も齋藤健法相も正面から答えられず、 「(柳瀬氏は)参与員制度が始まった平成17年(2005年)から現在に至るまで長年にわたり参与員を務めている方」「(柳瀬氏の)ご発言はわが国の難民認定制度の現状を的確に表している」と柳瀬氏の擁護に終始した。
福島党首は、「1年間1000件というのはデタラメ。本当だとしてもデタラメだ」として、柳瀬氏の発言の信ぴょう性を疑問視。仮に柳瀬氏の発言が本当ならば、一つひとつの審査が丁寧に行なわれていない可能性があると指摘した。前出のアンケート調査によれば、難民審査参与員が審査にかける時間は全体平均で、ほぼ6時間だという。1000件をこなすには、年の平日全てを使っても足らない計算だ。福島党首は、「立法事実が揺らいでる」と入管法改悪は認められないと断じた。
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