社会新報

入管難民法改悪の強行成立に抗議する~難民申請中の送還を可能にする暴挙

職権で採決に踏み切った杉久武委員長(公明党、手前左)に福島党首ら野党議員が詰め寄り強く抗議した(6月8日、参院法務委員会)。

入管難民法改悪に反対する大集会で訴える福島党首(右)と大椿副党首(6月5日、国会正門前)。

 

(社会新報6月21日号1面より)

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 改悪入管難民法が6月9日に参院本会議で可決、成立した。政府与党と一部野党が数の力で押し切り、日本の人権意識の低さを世界に露呈した。一方で市民社会での改悪反対運動や、多文化共生社会を求める動きはかつてなく盛り上がった。その流れは、改悪入管難民法の成立で断てるものではない。法施行まで1年、それまでに廃止する運動が求められる。
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 一般社団法人「反貧困ネットワーク」などの複数の団体の呼びかけで6月5日、改悪入管難民法の採決に反対する市民の集会が国会前で行なわれ、5500人(主催者発表)が参加した。市民らは名古屋入管で死亡したウィシュマ・サンダマリさんの遺影や、プラカードを掲げ、「入管法改悪反対」「強行採決反対」などのコールをくり返した。

共に生きていきたい

 反貧困ネットワーク事務局長の瀬戸大作さんは集会で、「ツイッターで確認できるだけでも70団体以上が入管法に反対していて、東京都内のあちこちの駅頭でどこに行ってもスタンディングしている」として、運動の広がりを実感していると述べた。そして、「僕らは本当の意味で(難民その他の帰国できない事情のある外国人の人々と)共に一緒に生きていきたいし、支え合っていきたい。どんなことあっても守り続けていきたい」との決意を語った。
 「移住者と連帯する全国ネットワーク」の山岸素子事務局長は、「私たちが呼びかけた入管法改悪反対の署名は20万筆を超えた。全国各地でさまざまな形で声を上げる主体が増え、その連帯が広まっていることを、本当に力強く実感している」と述べた。また、「今回、一つの焦点となった仮放免の子どもたちの在留特別許可は、法改正にかかわらず、すぐにでも実施すべきこと。当然ながら、子どもだけでなく家族を含めた在留特別許可が認められるべきだ」と訴えた。
 ウィシュマさんの遺族ワヨミさんとポールニマさんも登壇。ワヨミさんは、大阪入管で常勤医師が酒に酔った状態で診療を行なったことが発覚した件で、「(入管施設内で適切な医療が受けられなかった)ウィシュマと同様の事件がまた起きた。日本政府はこの種の事件が二度と起きないようにすると言ったが、信じられない。入管法改悪はやめるべきだ」と憤った。
 社民党の福島みずほ党首と大椿ゆうこ副党首も集会に参加。福島党首は、「難民の命を紙切れのように扱う国は私たちの日本人の命も紙切れのように扱うのではないか」と警鐘を鳴らした。大椿副党首は「日本人妻が外国人夫の国外退去を懸念しているという新聞記事を読んだ。入管法の改悪は日本で暮らしている外国人だけでなく、彼らと結婚した日本人配偶者も分断するものだ。徹底的に闘う」と述べた。
 集会の最後には、長年、入管問題に取り組み続けている児玉晃一弁護士が登壇。「難民審査参与員の一人は、難民の出身国情報をたまにしか見ないと言っていた。信じられないことだ。諦めないからさまざまなことが明らかになった」と、この間の国会審議の意義を語り、「30年間こういう活動をやってきた。なぜ諦めないのかとよく聞かれるが、それは正しいことをしているからだ。入管難民法改悪は間違っている」と訴え、大きな拍手を送られた。

立法事実2つが崩壊

 改悪入管難民法は9日、参院本会議で成立したが、今後も、この間の国会審議で明らかになった諸問題を追及し続けなくてはならない。改悪入管難民法は二つの立法事実が崩れている。一つは、柳瀬房子難民審査参与員の信ぴょう性だ。1年半前から「500件の対面審査を行なった」という柳瀬発言について、齋藤健法相も「不可能」と答えているように、信ぴょう性が失われている。また、柳瀬氏の難民認定率は直近で0・15%と異常に低い中、年によっては111人いる参与員の中で、柳瀬氏が全体の4分の1を審査していたという偏りがある。参与員制度そのものが問われる事態だ。
 もう一つは入管施設での医療体制とこれに関する隠ぺい・虚偽だ。大阪入管の常勤医師が酩酊(めいてい)して診療していたことは、今年1月で、同2月下旬には齋藤法相に報告があった。にもかかわらず、国会にはそれを隠し続けた。さらに今年4月に入管が「ウィシュマさんの死の教訓」としてまとめた各地の収容施設での医療状況の報告では、1月以降は出勤していない酩酊医師が「常勤」扱いとなっていた。これは国会への虚偽の報告だ。

 

メモ【改悪入管難民法】9日、参院本会議で自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の賛成多数で成立した。主な内容は、①難民認定申請中でも3回目からは強制送還の対象にする②送還を妨げる行為などに刑事罰を科す③収容の代わりに支援者らの管理下に置く「管理措置」を導入④施設収容中は、3ヵ月ごとに収容の必要性を見直す⑤ウクライナなどの紛争地からの避難民を難民に準じて保護するーーなど。