(社会新報11月2日号1面より)
共同テーブル主催のシンポジウム「沖縄を再び戦さ場にするな! 沖縄・南西諸島からの訴え」が10月17日、東京・文京区で行なわれ、会場は約250人でいっぱいになった。
「捨て石」の沖縄
最初に、「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」事務局長の山城博治さんが報告を行なった。
山城さんは「日本政府もバイデン米大統領も中国脅威論を叫び、(ありもしない)台湾有事や沖縄・南西諸島有事の切迫性をあおり立てている」と語った。
そうした状況下で、南西諸島の島々では「安保関連3文書」に基づくように、「戦闘機や大型輸送機が離着陸できるよう滑走路の延長工事が計画されている」と現状を伝えた。
山城さんは「この『つくられた有事』に乗ってはならない」として、「(第2次世界大戦中の)沖縄戦で日本軍は民間人を防波堤にして戦争を長引かせる作戦をとった。現在においても、私たちは軍隊にじゅうりんされないために、声を上げていかなければならない」と訴えた。
攻撃目標になる危険
次に、宮古島市議の下地茜さんが現地の状況について報告した。
下地さんは、自衛隊が宮古島にミサイルを配備したことについて、「住民を戦争に巻き込む配備だ」と批判した。
宮古島に配備された地対艦ミサイルは、軍用車両から発射される。
下地さんは「宮古島は車なら3時間ほどで一周できる狭い島だ。複数の軍用車両が島内を移動しながらミサイルを発射すれば、軍民分離はできなくなる」と訴えた。
次のようにも語った。
「ジュネーブ条約では文民保護の基本は軍民分離であり、非軍事対象には軍事攻撃できないはず。だが、ミサイルを置いたら攻撃対象になる。『それで良いのか』という議論が全くないままに、切り替えが進んでいる」
米国に操られる日本
前出の2人に加え、『琉球新報』東京支社記者の明真南斗(あきら・まなと)さんと社民党市民共同・新社会党委員長の岡崎宏美さんも加わり、議論が行なわれた。評論家の佐高信さんがコーディネーターを務めた。
明さんは防衛省周辺で取材していて、「厳しい安全保障環境があるから沖縄に負担が増すのは仕方ないという人々の意識を感じる」と語った。
岡崎さんは、山城さんと下地さんの報告を受けて、次のように語った。
「私たちは、戦後に新憲法ができてホッとした。だが日米安保条約に飲み込まれ、日米合同委員会を中心にして『日本はこうやるんだ』ということ(米国の指示)が、私たちに知らされないままに押しつけられてきた。私たちはそうした事実を思い起こす必要がある」
国民を守らぬ自衛隊
佐高さんは、自衛隊の統合幕僚会議議長(現・統合幕僚長)を辞任した来栖弘臣氏が2000年に著書の中で「国民の生命・財産を守るのは警察の役目であって、武装集団たる自衛隊の役目ではない」などと記したことを指摘した。
その上で、「彼らは『国を守る』と言うが、守るのは『国民のいない国』だ。自衛隊を増強してもわれわれは守られない」と語った。
これを受け、下地さんは「私は市議会で『自衛隊は国民を守らない』と訴えている」と同調した。
山城さんは、米軍が「対中国のぜい弱性」を理由に沖縄の一部部隊をグアムなどに後退させていることを取り上げ、次のように語った。
「米軍の小部隊は南西諸島の40の島々からミサイルを撃つ計画だが、中国からの反撃や侵攻にあえば逃げ出すだろう。残るのは自衛隊だけになる。結局、死ぬのは日本の若者や自衛隊の人たちだ。そんな馬鹿げた戦争に入り込んではならない」
シンポ全体の「まとめ」として、山口大学名誉教授の纐纈厚さん(日本政治史)は米政権中枢から漏れ出る数々の証言を紹介しつつ、「米国は本土防衛のために、沖縄だけでなく日本全体を『捨て石』として括り込もうとしている」と警鐘を鳴らした。