社会新報

大椿副党首の緊急韓国訪問レポート~STOP!汚染水海洋放出

韓国の国会議事堂前では国会議事堂前では、韓国革新系最大野党「共に民主党」の禹元植国会議員(左)もハンガーストライキを続けていた。大椿副党首が激励に訪れ、禹議員と握手を交わした。中央は姜恩美国会議員(6日)。

7日、韓国の国会内で、正義党と社民党が記者会見し、海洋放出反対の共同声明を発表。中央が大椿副党首。右が姜恩美議員。

 

(社会新報7月26日号1面より)

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 福島第1原発のALPS処理汚染水の海洋放出に反対し、韓国の革新系政党「正義党」と「共に民主党」がハンガーストライキをしていると知り、激励を兼ねて7月6~7日、急きょ訪韓した。(社民党副党首・参院議員 大椿ゆうこ)
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 政府は、福島第1原発のALPS(多核種除去装備)処理汚染水の海洋放出をこの夏にも行なおうとしているが、県漁連と全漁連は今も「海洋放出反対」の姿勢を崩していない。7月4日、IAEA(国際原子力機関)から「安全基準に合致している」「人や環境への放射線による影響は無視できる程度のものだ」との報告書を受けた日本政府は、これでお墨付きを与えられたと言わんばかりに、「放出開始に向けた準備は最終段階に入った」とアピールする。2015年に政府と東電が県漁連と交わした、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行なわない」との約束をほごにして海洋放出を強行することはできない。しかし、関係者とはいったい誰を指すのか?「私たちは関係者ではないのか?」。そう問うのは韓国の人々だ。 

ハンスト議員を激励

 7月6日、仁川空港に到着すると、その足で日本大使館前に向かった。海洋放出に反対し、6月26日から日本大使館前でハンガーストライキを行なっている正義党の李貞味(イ・ジョンミ)代表を激励し、しばしの時間、意見交換を行なった。国会議事堂前では、共に民主党の禹元植(ウ・ウォンシク)国会議員もハンガーストライキを行なっており、激励に訪れて握手を交わした。どちらも、社民党が激励に訪れることを聞きつけた現地のマスコミが、多数待ち構えていた。この問題に対する韓国での関心の高さを実感するとともに、日本の世論との格差を強く感じた。両議員からは、韓国では世論の84%が海洋放出に反対している、海洋放出以外の選択肢を検討すべきであるとの提案がなされ、「海洋放出を連帯して止めよう」と確認し合った。
 その後、国会内で正義党、共に民主党、基本所得党、無所属の国会議員が集まり、懇談の機会を持った。「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連、旧挺対協)」前代表の尹美香(ユン・ミヒャン)議員からは、「日本へ帰ればバッシングを受ける中、韓国まで来てくれてありがとう」とねぎらいの言葉をもらった。社民党が海洋放出に反対すると、「韓国の月城原発では、日本よりも高いトリチウムが放出されているが、なぜそれは問題にしないのか」との批判が私のもとにも相次いだ。だが、溶解した燃料デブリに触れた汚染水を海洋放出するのは世界では初めてのことであり、一定の管理下で排出された通常運転の処理水と同様に考えることはできない。
 また、トリチウムだけでなく取り除かれていない核種が存在していることも、放出に反対する大きな理由だ。その上で、「事故を起こした原発は当然ながら、通常運転の原発でも環境や人体に影響を与える放射能を排出する。原発というエネルギーに依存し続けることの限界を、これを機に皆さんと一緒に考えたい」と訴えた。

服部スピーチに共感

 翌7日には国会内で、正義党と社民党の記者会見を行ない、共同声明を発表した。同席した服部良一幹事長は、「太平洋は日本だけのものではありません。日本の所有物ではありません。日本政府・東京電力の勝手な判断で、海に放射能を放出することは許しがたい」「東電と政府は関係者の声を聞くというけれど、じゃあ、韓国の皆さんは関係者ではないのですか? 韓国の漁民の皆さんは関係者ではないのですか? 関係者だと思います。日本政府は太平洋諸国の国々の声を聞くべきです」と訴え、大きな共感を得た。
 その後のぶら下がり会見では、国民の反対の声を無視し、日本政府と足並みをそろえる尹政権に対する評価についても尋ねられ、「この件で、尹大統領の支持率も低下していると聞いた。有権者は韓国国民なのだから、尹大統領は反対する8割の声に向き合うべきではないか」と答えた。

強制労働被害者と面談

 今回、正義党の姜恩美(カン・ウンミ)議員の計らいで、三菱重工業名古屋航空機製作所で強制労働させられた被害者の梁錦徳(ヤン・クムドク)ハルモニの光州のご自宅を訪問し、お話をさせていただくことができた。彼女は、日本に代わって韓国の財団が肩代わりする補償を拒否している原告の一人である。面会時間は限られていたが、その間、「あの時は、韓国人はバカだ、人間じゃないと思われていた」と何度も日本語で繰り返した。長期にわたる苦しい闘いを強いられていることを謝罪し、「ハルモニたちが、お金のためでなく、尊厳回復のために闘っていること、企業による誠実な謝罪を求めていることは知っています」と伝えた。この件は、韓国でも大きく報じられた。

 

 【韓国「正義党」】2012年に結成された韓国の革新系政党。党代表は李貞味・国会議員。「韓国型社会民主主義」を目指す。20年の総選挙で6議席を獲得。社民党とは友好関係にある。今年5月、服部良一党幹事長が訪韓し、正義党の李代表らと会談。①福島第1原発汚染水の海洋放出に反対する②徴用工問題で日本政府の誠意ある謝罪と加害企業の損害賠償を求める③日米韓の軍事同盟強化と日本の平和憲法の改悪に反対するーーことなどで合意している。