社会新報

福島原発事故の汚染水を海に流すな!~日比谷野音の東京集会で多くの人が訴え

夜の東京集会も熱気に包まれた(5月16日、日比谷野外音楽堂)。

 

(社会新報5月31日1面より)

 

 東京・千代田区の各所で16日、「これ以上海を汚すな!市民会議」と「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」の共催で福島第1原発の汚染水問題(解説)についての「東京行動」が実施された。
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 午前10時半から、東京電力本店前で「汚染水を海に流すな」などと訴える要請アピールが行なわれ、東電に要請書が提出された。
 午後には、国会前集会の後、衆院第二議員会館で院内集会が開催され、岸田首相と衆院議長宛ての要請書が担当官に手渡された。

約束違反の東京電力

 午後6時半から、日比谷野外音楽堂で「汚染水を海に流すな!5・16東京集会」が開催され、約500人(主催者発表)が参加した。
 最初に、ルポライターの鎌田慧さんが主催者あいさつを行なった。
 鎌田さんは「岸田政権は口ではGXとかグリーン・トランスフォーメーションと言いながら、原発の汚染水を『処理した』としてばらまく。今まで原発によって人間が殺され、地球全体が汚染されてきた。反対闘争の結節点での共闘として『汚染水反対』がある」と力強く語った。
 福島県を中心に活動する「これ以上海を汚すな!市民会議」の織田千代共同代表は、東電社長が2015年に福島県漁業協同組合連合会に送った文書を紹介。文書の中で、タンク内の処理水について「漁業者をはじめ、関係者への丁寧な説明等必要な取組を行う」「こうしたプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、(略)タンクに貯留いたします」と約束している事実を指摘し、次のように語った。
 「東電はこの約束を守らず、原発事故被災者にさらなる苦悩を強いている。原発事故によって、私たちは事故前の日常を奪われた。汚染水の海洋放出は、この手でまた放射能を広げることを意味する。私たちが経験した『重荷』を他の国にも広げてしまうことは、本当の復興とは言えない」

裏切られた漁業者

 社民党の福島みずほ党首も駆けつけ、壇上から「原発を推進してきた国も東京電力も責任を取れ。汚染水を海に放出するなんて、あり得ない。これ以上、放射性物質を拡散させてはならない」と訴えた。
 福島県の小名浜機船底曳網漁業協同組合の柳内孝之さんは、漁業者として次のように訴えた。
 「12年前の原発事故によって、水産物は放射能に汚染され、漁業者は絶望の淵に追いやられた。やっと試験操業が終わり、本格操業に向けた移行期間にある。これまでタンクの汚染水が漏れる事態が何度も起こり、そのたびに福島の水産物は拒否されてきた。東電は漁業者など関係者の理解なしには『処理水』を処分しないとの約束を無視し、海洋放出するのか。漁業者は納得していない」
 最後に、「これ以上海を汚すな!市民会議」の佐藤和良さんが、次のように行動提起した。
 「東電と国は今、『処理水』の海洋放出の準備をしており、今年7月以降に実施する段取りだ。この6~7月に私たちは力を合わせてこれを止めなければならない。各自治体議会の6月定例会に向け、『汚染水を流すな』という請願などを行なってほしい」
 福島県議会初日の6月20日には、集中要請行動を予定しているという。
 集会終了後、参加者は銀座方面にデモ行進した。途中の東電本店前では「原発いらない!」「汚染水を流すな!」などシュプレヒコールの声が一段と高まった。

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【解説】
福島第1原発の汚染水問題
トリチウムは除去できない

 2011年に東京電力福島第1原発(全6基)の4基で起きた大事故の後、溶融核燃料を冷却した水と地下水などの混合汚染水が多核種除去装置(ALPS)で処理され、敷地内の多数のタンクに貯蔵されている。
 現在、タンク内の「ALPS(アルプス)処理水」は満杯に近づいており、東電側は今年夏ごろから「処理水」を海洋放出する方針だ。
 国や東電によると、この「処理水」は、水素の同位体であるトリチウム以外の放射性物質を「国の安全基準」を満たすよう浄化したもの。だが、トリチウムは同装置では除去できず、海水で大幅に薄めて海洋に放出されるという。
 経済産業省のホームページによると、トリチウムは「自然界にも広く存在する放射性物質」で、「処理水」の海洋放出による「環境や人体への影響は考えらない」と断ずる。
 他方で、処理水の海洋放出に反対する側は、まずトリチウムの安全性に疑問を呈する。生物濃縮や遺伝子損傷の可能性を指摘する研究者も多く、安全性への評価は分かれる。
 トリチウム以外の放射性物質についても、安全性への疑問の声は根強くある。
 また、安全確保が不十分なまま「原発回帰」にかじを切った国と東電に対する不信感も大きい。

集会参加者らは銀座の街をデモ行進した。

 

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