(社会新報2022年1月1日号2面【主張】より)
2021年の衆院選で印象的な出来事があった。大阪府の箕面市内を選挙カーで走っていた時のことだ。後ろから高齢の男性が、「ちょっと待て、ちょっと待て」と小走りで追いかけて来られた。何か迷惑をかけてしまっただろうかと、車を道路脇に止め、恐る恐る窓を開けるとこう言われた。「金を配るなんて話はどこの政党でもするんや。あんたとこの政党は、他が言わんことを言わなあかん。憲法を守る、9条を守る、もっとしっかりそれを言わなあかん」と喝を入れられた。
コロナ禍の中で困窮する人々の暮らしをどう立て直すのか、給付金や消費税の問題は衆院選の重要な争点だった。格差・貧困が人々や諸外国との間に分断と対立を拡大させ、政治は右傾化を隠そうともしなくなった。おそらく戦中・戦後の空気を知るだろうその方には、戦争への足音が聞こえているのかもしれない。社民党が寄って立つところは憲法だ。頑固に護憲を言い続ける社民党だからこそ応援する、そう背中を押されたような出来事だった。
2022年は改憲と闘う年になるだろう。衆院選後から、急激に改憲の声が大きくなり始めた。ひときわ改憲を訴えるのは、国会の中で第3党にまで登りつめた日本維新の会だ。代表の松井一郎大阪市長は、「憲法改正の賛否を問う国民投票を来年夏の参院選と同日に実施するべきだ」と繰り返し主張している。あと半年でそんなことができるわけがないと楽観視してはならない。数の力で無理筋を押し通すのが維新だ。野党共闘の枠組みから外れ、維新との連携を強化する国民民主党も、今国会から衆院憲法審査会の幹事懇談会に与党側として参加することになった。野党の中にも、「議論すること自体は良いのではないか」と改憲論議に乗っかりそうな危うい議員もいる。改憲は、衆参両院の3分の2以上の賛成で国会が発議した後、国民投票へと進む。自公政権に、維新、国民、無所属議員が加わり、改憲勢力は衆院選で352議席となった。衆院の4分の3を占めている。衆参両院では、国会発議に必要な3分の2を維持しており、改憲議論が勢いづくのは間違いない。
夏には参院選が控えている。得票率2%をクリアできなければ、今度こそ社民党は政党要件を失う。この時代に、社民党がなくなってはならない。護憲を望む人々の選択肢を奪ってはならない。社民党の覚悟と本気を見せる年だ。
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