(社会新報10月18日号3面より)
「全てジャニーズと付くものは消えていく」。ジャニーズ事務所(以下、ジャニーズ)社長の東山紀之氏は10月2日の記者会見でジャニーズとの決別を宣言した。今年3月、英国メディアのBBCが報じた、ジャニーズの創業者で元社長の故・ジャニー喜多川氏による少年らへの性加害報道を皮切りに、性被害当事者による相次ぐ告発などにより、9月7日のジャニーズの記者会見で喜多川氏の性加害を認めた。しかし、ジャニーズの名を存続していくとするなど、被害者本位に立たない対応が世論から批判され、会見から1ヵ月も経たずして2度目の記者会見となった。その場で東山社長が、「全てが後手に回り内向きだった」と後悔を示した。今なお、内輪の常識にとらわれたままで、ジャニーズ出身の東山社長体制で性加害問題を解決できるか甚だ疑問である。
喜多川氏による性加害問題については、ジャニーズを起用する企業や報道してこなかったメディア、向き合わなかった政治など、多方面の責任を問う声が上がっている。かつて、喜多川氏が週刊文春による氏の性加害報道に対して名誉毀損(きそん)で訴えたが、2004年に最高裁が報道の真実性を認定した二審判決を確定させた。しかしながら当時の企業やメディアなどは、「芸能界のスキャンダル」程度の認識で真剣に向き合わなかった。
今回、BBCの報道や当事者の告発などを受けた世論は、ジャニーズに対して厳しくなった。また、1度目の会見で性加害を認めてから、特に海外で展開している企業を中心に、ジャニーズとの契約を取りやめるなど、性加害が見逃されることはなかった。人権尊重などのグローバルスタンダードを順守しない企業は、消費者・株主などから選ばれなくなる。企業のシビアな姿勢はグローバリゼーションの賜物である。
また、性加害は人権侵害であるという認識が社会に広まっている。22年、元自衛隊員の女性が隊内で性暴力を受けていたことを告発した。告発前に隊内で報告したが真剣に取り合ってくれなかったという。しかし、世論は許さなかった。告発後、関与した隊員は懲戒免職となった。性加害で社会的地位を失うことが当たり前となった。ジャニーズはそのことに気付けていなかった。だから一度はジャニーズの名を残そうとした。しかし、20年前と違うのは、日本国内の人権意識が向上していたということだ。