社会新報

【主張】参院選の争点 ~ ミサイルよりコメを!

(2025年6月5日号より)

 

 2014年秋に行なわれた沖縄県知事選挙で当選した翁長雄志知事の応援に、病身を押して駆けつけた俳優の菅原文太さん(故人)の発言が思い起こされる。1万人集会でこう語った。
 「政治の役割は2つある。一つは国民を飢えさせないこと。安全な食べ物を食べさせること。もう一つは、これは最も大事ーー絶対に戦争をしないこと」。会場は万雷の拍手に包まれた。それから10年余りが経過したが、日本の政治がこの警告にどう応えるのか、いま問われていないか。
 米価の高騰に国民が苦しむなかで所管大臣の江藤拓農水相が「私はコメを買ったことがない。支援者の方々がたくさんくださる。売るほどある」と発言した。この発言に国民の怒りが爆発し、当初は続投させるつもりだった石破首相は更迭せざるを得なくなった。
 こうした姿勢からは、今回の事態を招いた根本原因、つまり1971年にコメ余りを理由に始まった減反政策の誤りへの反省はみられない。
 この間、政府の農業政策を鋭く批判してきた元農林水産官僚で東京大特任教授の鈴木宣弘さんは、政府が敵基地攻撃能力を保有する武器を購入するなど大軍拡を進めていることを念頭に、「そんなことをやっている場合ですか」と警鐘を鳴らす。
 一方で、政府・自民党の戦争準備は急ピッチだ。
 自民党の西田昌司参院議員が沖縄の「ひめゆりの塔」の展示内容について「ひどい」と非難し、事実無根の暴言を吐いた。沖縄県内はじめ全国から非難する声が広がったが、西田氏は発言の撤回を拒否している。
 また政府は、「台湾有事」が起きた時には沖縄県内で人口最多の沖縄島は屋内避難、宮古・八重山の住民ら12万人は船や飛行機で九州各県と山口県に避難させるという計画を進めようとしている。九州・山口なら安全という保証があるのか、嘉手納や普天間という戦略基地がある沖縄本島はなぜ「屋内避難」なのかなど、疑問は尽きない。
 文字どおり「机上の空論」だが、「島を守るために自衛隊を配備すると言っていたのに、島を出ていく話になるのはどういうことだ」という怒りの声が住民から聞かれるというが当然だ。宮古・八重山を戦場とすることをいとわない政府の姿勢は厳しく糾弾されなければならない。参院選では、社民党が訴える「ミサイルよりコメを」が大きな争点となろうとしている。