社会新報

【主張】「南西シフト」加速 ~ 軍拡あおる長射程ミサイル初配備

対ソ連を想定した北海道・東北中心の日本の防衛態勢を、対中国を想定して沖縄・南西諸島方面に重点を移す、いわゆる「南西シフト」が加速している。
2010年12月の防衛大綱で正式に打ち出された後、国境の島・与那国島に陸上自衛隊の沿岸監視隊約160人が編成されたのは16年3月。ちょうど10年前だ。同島には22年4月に空自のレーダー部隊が、24年3月には陸自の電子戦部隊も移駐した。26年には対空電子戦部隊、30年に地対空ミサイル部隊が配備される予定もある。あれよあれよという間に要塞のような島になってしまった。
この10年間、与那国島だけでなく、南西諸島の各地で自衛隊基地建設や部隊配備が進んだ。19年3月には奄美大島に警備部隊とミサイル部隊が配備。20年3月には宮古島に、23年3月には石垣島にミサイル部隊が配備された。24年には沖縄本島の勝連にミサイル指令部が設置された。
22年の安保3文書以降、さらに全国化が進み、輸送力の強化や火薬庫の増設、補給施設の建設などが各地で進められている。この3月には、熊本県の健軍駐屯地に長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」が初めて配備された。1000㌔を超える射程を持ち、憲法違反の敵基地攻撃に使える装備だ。富士駐屯地(静岡)には長射程の高速滑空弾も配備された。
小泉防衛相は3月31日の記者会見で「抑止力、対処力を強化する上で極めて重要な取り組み」と強調したが、基地周辺住民の間では、「標的になるのではないか」との懸念も高まっている。
軍事力の強化が抑止力を高めて安全につながるのか、軍拡競争をエスカレートさせて不信感の連鎖を生み、戦争に巻き込まれる危険を高めるのかは、国際政治における永遠のジレンマともいわれているが、軍事力の強化を「抑止力」として機能させるためには、武力だけでなく意図を伝える適切なコミュニケーションが不可欠とされる。少なくとも高市早苗首相の「台湾有事」発言後、日中関係が悪化している中での敵基地攻撃能力配備は、不信や敵対心をあおるだけだろう。
米国とイスラエルの国際法を無視したイラン攻撃には、佐世保基地配備の強襲揚陸艦トリポリと沖縄に駐留する海兵隊の第31海兵遠征部隊(31MEU)などが投入されている。米軍基地の「リスク」もかつてなく増大している。