(社会新報12月7日号3面より)
イスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスの間の戦闘が一時「休止」している。11月24日から4日間、戦闘を休止し、その間にハマスが拘束する人質を解放する合意が成立したからだ。その後、休止は2日延長され、拘禁されていたパレスチナ人の一部も釈放された。
イスラエルは、ハマスが10人解放するごとに1日ずつ戦闘を休止するとしている。ハマスの人質は230人以上とみられ、拘束期間はすでに50日を超えた。早期に全員の解放を実現するためにも、まずは休戦期間の延長に合意すべきだ。
戦闘休止の背景には、人道的休戦を求める国連安全保障理事会決議(11月15日)、国連総会決議(10月27日)の採択や、内外の批判を受けた米国の圧力、イスラエルの過剰な武力行使への国際的な批判などがある。不十分とはいえ国際社会が足並みをそろえたことが、イスラエルの停戦拒否の姿勢を転換させる力になったことは間違いない。恒久的な停戦を求める声をさらに強め、イスラエルを包囲したい。
戦闘開始からの50日で、死者は1万5000人に迫っている。その多くが民間人で、3分の1が子どもだ。ガザ市民の約8割に当たる170万人超が住む場所を失い、避難民となった。食料や飲み水、医薬品、燃料の不足も深刻で、大量の餓死も懸念されている。国際人道法無視の露骨な攻撃も目立ち、医療関係者や国連職員などの犠牲も増え続けている。
イスラエルはハマス壊滅という目標と攻撃を続ける姿勢を崩しておらず、いつ戦闘が再開してもおかしくない状況だ。ガラント・イスラエル国防相は戦闘休止について「短い中断になる」と述べ、少なくとも2ヵ月は戦闘が続くとの見通しを語った。そんなことになればさらに万単位の犠牲者を生みかねない。イスラエル軍はすでにガザ北部から南部に侵攻を拡大する「第2段階」を宣言し、住民に移動を命じている。戦闘再開はガザを無人化する「民族浄化」になりかねない。
紅海では日本企業の貨物船がイエメンの武装組織フーシ派に乗っ取られる事件が起こった。レバノンの武装組織ヒズボラとの交戦も起き、中東全体が不安定化しつつある。イスラエルの軍事行動を止め、人質の早期解放と恒久的な停戦を実現した上で、オスロ合意の原点に立ち返ったパレスチナ和平の再構築にただちにとりかかるべきだ。