「女性」目線の政治が必要~「軍拡を許さない女たちの会」の田中優子さんが講演
講演する田中優子さん(4月19日、参院議員会館)。
(社会新報5月24日号2面より厳しい)
法政大学前総長で名誉教授の田中優子さんが4月19日、今年1月に立ち上げた「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」の紹介をまじえ、参院議員会館で講演を行なった。立憲フォーラムと「戦争をさせない1000人委員会」の共催で、約100人が参加した。
女性が声を上げる時
日中戦争・アジア太平洋戦争の終結まで、女性には参政権がなかった。戦争が続く中、女性は集会で議論することさえ許されなかったという。
田中さんはこうした歴史を解説した上で、「今、女性たちは参政権を持ち、戦争の不安がある事態を初めて迎えている。女性が声を上げ、選挙で投票することがとても重要だ」と訴えた。
同時に、戦争中に参政権のない女性たちによって各種の「婦人会」が結成され、戦争推進の一翼として利用された歴史に触れ、権力にからめ取られないために「物事を多面的に捉える必要がある」と注意を促した。
続けて、田中さんは「女たちの会」の声明を読み上げ、「今こそ、生活と平和を守る『女性』目線の政治が必要だ。歯止めなき軍拡を推し進めるのではなく、女性や子ども、若者や社会的弱者の目線に立った政策を進める必要がある」と力説した。
戦争への道にNOを
その上で、岸田政権が進める大軍拡・敵基地攻撃能力保有路線を前にして、2つの疑問を呈した。
第1は、「台湾有事は日本有事か?」という疑問。
1972年の日中共同声明で日本は「1つの中国」を承認しているとして、「中国が何らかの理由で台湾に入ったとしても、日本には邪魔をする理由がない。日本が介入すれば内政干渉になるし、軍事的であれば侵略になる」と警鐘を鳴らした。
それにもかかわらず、岸田政権は「軍事」力強化の政策を強引に推し進めていると批判した。
第2は、少子化問題の認識への疑問。
自民党の麻生太郎副総裁が今年1月、「少子化の最大の原因は女性の晩婚化」との認識を示したことに対し、田中さんは「一昔前の男性が大黒柱であった時代の記憶だけで社会を見ている」と批判した。
その上で、「少子化問題は『子どもの人数が減るから大変』というだけではなく、『女性が1人の人間として生きていけない』という問題でもある。女性が『社会的な女』という役割を負わされ、自分で選択ができない状況に追い詰められていることが、少子化の真の原因だ」と指摘した。
緻密につながる知恵
会場からの「日本ではなぜ皆が一緒に闘えない状況にあるのか?」との質問に対し、田中さんは次のように応じた。
「放送法問題や日本学術会議問題を見れば分かるように、私たちの見えないところで(政治権力による)ある種の『圧力』が機能している。さまざまな職場などでも類似の圧力が起きているのではないか。なぜ改善できないかと言えば、同調圧力というか、周りと違うことを発言したりすることへの恐怖心があるためではないか。だが、(一人で闘わなくても)周りの人たちと『緻密につながる』ことはできるはずだ」
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