(社会新報2021年11月17日号1面より)
太陽光発電関連会社「テクノシステム」生田尚之社長の融資詐欺事件に対する東京地検特捜部の捜査に端を発し、今年8月に衆院議員会館の2人の公明党代議士事務所が家宅捜索された貸金業法違反(無登録)容疑の捜査が、いよいよ本格化している。
遠山氏に1千万円か
特捜部は、貸金業登録を受けていない業者が日本政策金融公庫の新型コロナ対策の特別融資について融資を希望する会社との仲介をした際、公明党秘書(当時)らも関与していたと見て家宅捜索したわけだが、当時、この秘書が仕えていた遠山清彦元財務副大臣(緊急事態宣言中、銀座高級クラブで飲んでいたことが公になり、今年2月に議員辞職)に「現金約1000万円を手渡した」と仲介業者が供述しているとの情報が漏れて来ている。
これを裏づけるように、遠山氏の知人によれば、遠山氏自身が、家宅捜索後、「逮捕を覚悟している」と漏らしていたという。
11月6日には、特捜部は遠山氏から任意で事情を聞いている。現金授受の有無などを確認したとみられる。
さらに、8月にやはり事務所の家宅捜索が行なわれた太田昌孝衆議院議員(当時)の秘書(同)についても、別の業者の仲介に関与していたことが明らかになり、太田氏は先の衆院選に立候補せず議員辞職している。業者から現金を受け取っていた額は、遠山氏よりこの秘書の方が大きいようだ。
この2人の業者は、共にテクノシステムの顧問を名乗っていた。中でも注目されるのは、遠山氏の関与が指摘されている業者で、牧厚氏という70代の男性である。
この牧氏、「地球環境保全機構」(旧・日中協力会)という団体を96年4月から主宰していた。任意団体で、2014年からは社名を変えて環境問題にシフトするが、それまでは日中関係改善を主眼とし、設立には後藤田正晴元副総理や藤井富雄元公明党最高顧問(共に故人)も尽力したとされる。理事には鳩山由紀夫元首相、森喜朗元首相、平沢勝栄元復興大臣、それに遠山氏などが就いていた。
この牧氏がテクノシステムの顧問を名乗っていたことは前述のとおりだ。こうした縁から、牧氏と遠山氏は懇意になり、遠山氏は今回の疑惑が出ている融資仲介に関与することになったと見られる。
そのため、牧氏の関係先も家宅捜索され、さらに特捜部の事情聴取も受けている。「現金約1000万円を手渡した」と供述した業者とは、この牧氏を指す。
テクノ顧問2人に捜索
さらに興味深いのは、特捜部が公明党議員2人の事務所を家宅捜索した翌日、牧氏の最側近だった奥平陸氏も、山口県下関市の会社など少なくとも4ヵ所が家宅捜索され、その後、事情聴取を受けている事実だ。この奥平氏も、牧氏を介してテクノシステムの生田被告や遠山氏とも面識を持ち、融資の件にも関与していた模様だ。
奥平氏は「サスケホールディングス」(下関市)というホールドカンパニー代表を務めるが、同社監査役には16年9月から17年3月まで前田晋太郎・下関市長が就いていた。
前田氏といえば、安倍晋三元首相の「桜を見る会」前夜祭をめぐる疑惑が浮上した際、「何十年も頑張って応援して来た代議士がトップを取って、招待状が届いて何が悪い」という旨の発言を市長の定例会見でやった安倍氏の元秘書。
その前田氏がサスケHD監査役を辞任したのは、市長になったためで、その後、同社監査役は吉田真次・下関市議が20年4月まで引き継いでいた。
このサスケHDの傘下企業の中には、やはり奥平氏が代表を務めていた「平成工業」という足場仮設工事会社があり、上場を目指していたが18年1月に倒産している。また20年10月、奥平氏はサスケHDの消費税還付詐欺で逮捕され有罪判決を受けている。
捜査の本丸はどこか
テクノシステムから延びる特捜部の捜査には、さらにこの先があるのか?
テクノシステム側から遠山氏同様、献金を受けていた小池百合子・東京都知事を狙っているともいわれる。テクノシステム同様、太陽光発電関連のこちらはソーシャルレンディング関連で得た資金5000万円について、細野豪志衆院議員への闇献金疑惑が18年6月に浮上した際(特捜部が動くも捜査は頓挫)、その背後の実力者として名が出た政策シンクタンク「大樹総研」の矢島義也氏を狙っているとの見方もある。だが、今のところ、共に明確な動きは見えていない。
東京地検特捜部は今年5月27日、横浜市西区の太陽光発電関連会社「テクノシステム」が2つの金融機関から融資金11億円超を詐取したとして、詐欺の疑いで生田尚之社長ら同社役員3人を逮捕し、関係先を家宅捜索した。逮捕容疑は昨年、太陽光発電やバイオマス発電の虚偽の設備の名目で融資申込書などを提出し、阿波銀行から約7億5000万円、富士宮信用金庫から約4億1500万円の計約11億6500万円の融資金を詐取した疑い。特捜部は6月16日、生田社長ら3人を起訴。さらに信用組合から約10億5000万円をだまし取ったなどとして、生田被告ら3人を再逮捕。詐取額は計約22億円に上る。