社会新報

【主張】G7広島サミット~核保有国による広島の政治利用を許さない

(社会新報5月31日号3面より)

 

 「大変な失敗だと思う」
 これは、5月21日に広島で閉幕したG7サミット(主要7ヵ国首脳会議)への、広島で被爆しカナダで核兵器廃絶を訴えているサーロー節子さんの評価だ。ICANの川崎哲国際運営委員も「核軍縮の道を切り開けなかった」と批判した。
 被爆当事者、核廃絶に取り組む市民団体からの失望の声は当然だ。G7広島サミットは核抑止力を肯定し、さらには武器供与など戦争拡大への会議となったからである。
 G7広島サミットは5月19日から21日にかけて開催。被爆地・広島での開催とあって、核廃絶の前進へ期待があった。
 しかし、G7共同文書「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」では核兵器禁止条約への言及がなく、さらに抑止力として核保有を正当化するものとなっている。またG7首脳らは、広島平和資料記念館への来訪や平和記念公園での献花を行なったが、米国のバイデン大統領は、核の攻撃を指令する通信機器が入ったカバン、いわゆる「核のボタン」を持ち込んで臨んだ。被爆者への冒とくであり、広島開催の意義を大きく損なう。
 唯一の戦争被爆国として、そして議長国として核廃絶に向けた動きを先導できず、広島開催は単なる政治ショーとなった。被爆当事者らを失望させた岸田首相の責任は極めて大きい。
 また、ウクライナのゼレンスキー大統領が2日目から来日し、米国はF16戦闘機の供与を表明。日本も自衛隊車両など新たな支援を決定した。軍事に軍事で対抗する内容となり、さらなる戦争拡大を確認する会議となった。
 平和憲法を持つ日本の役割は「国際紛争を戦争で解決しない」立場での停戦調停であって、一方の戦争当事者になることではない。今回のG7サミットを岸田首相は「歴史的に意義」としているが、中立的な立場を取る国が多いグローバルサウスなどに対しては米国追随を印象づけ、平和国家日本の立場を国際社会でますます毀損(きそん)することになるであろう。
 日本はG7で唯一のアジアの国である。欧米、とりわけ米国の思惑に追従するのではなく、核廃絶と世界の平和構築への橋渡しとしての役割を国際社会で果たすべきだ。核抑止力を是認し、戦争を拡大させ、対立をあおるだけに終わったG7広島サミットは惨憺(さんたん)たる結果となったと言わざるを得ない。

 

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