声明・談話

【談話】高市首相の所信表明演説に関して

【談話】高市首相の所信表明演説に関して

2025年10月27日 社会民主党全国連合幹事長 服部良一

 

 第219臨時国会が10月21日に召集され、同日の首班指名を経て新内閣を発足させた高市早苗首相が、24日の衆参両院での本会議で所信表明演説を行った。

 高市首相は、防衛関係費を2027年度に国内総生産(GDP)比2%に引き上げるとしている国家安全保障戦略の規定に関し、補正予算によって25年度中に前倒し実施するとともに、防衛3文書(安保3文書)も26年度中に改定すると述べた。防衛関係費の大増額には、財源の確保策としての「防衛増税」が不可避となり、物価高に苦しむ国民生活に打撃を与え、膨張する防衛費が社会保障関係費などを圧迫することは必至である。国民生活や社会保障などを犠牲しかねない軍拡予算は、断じて認めることができない。

 また憲法に関して「総理として在任している間に国会による発議を実現」と改憲の決意を示し、大軍拡・改憲内閣の性格を鮮明にした。

 物価対策には「必要な補正予算を国会に提出」するとし、ガソリンの旧暫定税率の廃止や自治体向けの交付金の拡充、電気・ガス料金の支援などを挙げているほか、給付付き税額控除の制度設計に着手するとある。だが、消費税減税については言及がなく、消費税率の引き下げ、あるいは食料品ゼロをしないのであれば、物価高に苦しむ国民生活への支援も中途半端なものとならざるを得ない。

 また、「食料安全保障」に関し「稼げる農林水産業」を打ち出してはいるものの、食料自給率への言及を欠いているほか、「社会保障制度改革を進めていく中で、現役世代の保険料負担を抑え」ると言いながら「OCT類似薬を含む薬剤自己負担の見直し」という形で医療崩壊につながるような医療費の削減を打ち出している。

 外国人政策では「人口減少に伴う人手不足の状況において、外国人材を必要とする分野があることは事実」とする一方で、「一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し、不安や不公平を感じる状況が生じている」として、「こうした行為には、政府として毅然と対応」するために、「政府の司令塔機能を強化し(中略)土地取得のルールのあり方についても検討」を行うとした。「排外主義とは一線を画します」と述べてはいるものの、外国人をもっぱら人手不足を補うための労働力とみなし、「人権」や「共生」という言葉もない。排外主義や差別的な風潮を根絶しようと意思がまったく感じられず、極めて問題である。

 なお、今回の所信表明では言及がないが、高市首相は厚生労働大臣に対し、「労働時間規制の緩和の検討」を指示した。残業の上限緩和や裁量労働制、高度プロフェッショナル制度の対象拡大などが念頭にあるとも報じられているが、労働時間の規制緩和は過労死を助長し、「働き方改革」に逆行する。働く人々の命と健康とを守るためにも、絶対にこれを容認することはできない。

 また、自民党と日本維新の会との連立与党は、連立政権の合意書に衆院議員の定数削減を盛り込んでいる。自民党の鈴木俊一幹事長は「小選挙区の定数を削減するのは、なかなか難しい」、維新の藤田文武共同代表は「個人的には比例でバッサリいったらいいと思う」などと発言した。以前より維新は、議員定数の削減を「身を切る改革」と称しているが、削減対象が比例代表なら、むしろ多様な民意の切り捨てである。

 またスパイ防止法の立法化は極めて危険な動きである。国民の思想信条を調査・管理し、戦前の「治安維持法」の再来を招くものである。一大国民運動を巻き起こす必要がある。

 今回の高市首相の所信表明を一言でいえば、「国民生活よりも軍拡」である。所信表明には「責任ある積極財政」や「戦略的な財政出動」という言葉はあるものの、それが防衛関係費中心となって社会保障関係費や国民生活を圧迫するのは明らかである。

 社民党は国会で高市政権と厳しく対峙し追及していくとともに、日本が再び誤った道に行くことの無いよう、野党連携を強化し国会内外の闘いを強めていく決意である。