社会新報

村山首相談話の会が追悼声明 ~ 信義を根幹に生き抜いた

2015年6月、日本記者クラブで戦後70年談話について意見を述べる村山元首相。

 

有識者などでつくる「村山首相談話を継承し発展させる会」(村山首相談話の会)は10月18日、村山富市元首相が17日に死去したことを受けて、声明を発表した。以下は全文。

2025年10月18日

声明

村山首相談話を継承し発展させる会・理事長  藤田高景

 

村山富市元内閣総理大臣のご逝去に際し、心から御冥福をお祈り申し上げます。

村山元首相の激動の人生を振り返れば、まさに、信念の人でありました。そして、村山談話の最後の言葉である「杖(よ)るは信(しん)に如く(し)は莫(な)し」を体現されるように、信義を全ての根幹において、生き抜かれた人生でした。

1995年8月15日に村山首相が発表した「村山談話」は日本軍国主義による侵略戦争と植民地支配がアジア諸国の人々に甚大な損害と苦痛を与えた歴史を深く反省し、非戦の誓いを全世界に向けて闡明(せんめい)にしたものであります。

「村山談話」は、近代日本の歴史を総括し、何故、あのような誤った戦争が引き起こされたのか、何故、あのような戦争を防ぐ事ができなかったのか、さらには二度と再び日本にファシスト政権を許してはならず、そして再びアジアへの侵略戦争を繰り返してはならないという、村山首相の断固たる信念に基づき、自民・社会・さきがけ3党連立政権が閣議決定した政府の公式談話であります。

「村山談話」が発表されて30年を経た現在、「村山談話」はアジア諸国、欧米諸国など世界各国から高い評価を受け、とりわけアジアの人々との和解と共生に大きく貢献してきました。

それ以後の自民党政権も民主党政権も、「村山談話」の中枢的骨格を踏襲してきました。また、その後の、日中・日韓・日朝などの文書に取り込まれ、今や、国際的合意文書ともなっております。今日、「村山談話」は日本の貴重な外交資産であるばかりか平和外交指針としての地位を確立しております。

「村山談話」を読んだ、アジアの人々の意見を聞くと、多くの人々から「村山談話からは、誠意を読み取れる」という感想が出されていますが、それは、この談話が、簡潔な文章の中にも、歴史を直視し、真心と信義を感じることができる、素晴らしい内容の文書であるからに他なりません。

一方、指摘しておかねば、ならないのは、1995年の「村山談話」発出後においても、日本の与党の閣僚や与党の高級幹部から、絶え間なく、歴史改竄主義・歴史修正主義的発言が連発され続けている事であります。

 日本の国内の一部の保守・極右勢力の中には、歴史への反省を「自虐史観」などと攻撃する動きもありますが、それは大きな間違いだと断言しなければなりません。

過去に私たちは、アジア諸国や中国に何をしたのか、その償いは果たしたのか、過去のけじめをつけたのかと謙虚に問うことこそ、日本の名誉につながるのです。

逆に、過去の歴史的事実を否定し、侵略を認めないような姿勢こそ、この国を貶めていることになるのです。

日本にとって、かつての侵略と植民地支配で、多大の犠牲と被害を与えた中国・朝鮮半島・アジア諸国との間に、末永く平和と繁栄の友好関係を保持し、築きあげて行くことが、極めて肝要なことは言うまでもありません。

私たちは、村山元首相からは、アジアの平和の根底となる、日本と中国・朝鮮半島・アジア諸国との、末永い良好な関係を築く事こそが、日本の国益を守り、発展させることに繋がるという事を、ご指導いただきました。

私たち「村山首相談話の会」は、今後、益々、村山元首相からご指導いただいた理念を引き継ぎ、「村山談話」の精神を高く掲げて、歴史を鑑とし、その教訓を汲み取り、中国・朝鮮半島・アジア諸国との平和と繁栄の未来の実現のために、全力をあげて、運動を強めていく事を、表明するものであります。