社会民主党
幹事長 服部良一
- 本日の衆議院憲法審査会において憲法改正の手続きを定める国民投票法改正案が賛成多数で可決された。菅総理は政府による新型コロナウイルス対応の不備の責任を日本国憲法に転嫁し、「緊急事態宣言」と「緊急事態条項」を混同させて改憲機運を高める試みを活発化させてきた。新型コロナウイルス禍に便乗した憲法「改正」を許してはならないという立場から、社民党はこの度の採決に強く抗議する。
- 自民・公明両党と、立憲民主党、国民民主党は、改正案の原案と修正案の両方に賛成した。日本維新の会は原案のみに賛成し、共産党は原案、修正案の両方に反対した。立憲民主党には慎重論も根強く存在したが、国民投票運動におけるCMや運動資金に関する規制について「法施行後3年をめどに、検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」との修正が反映されたことを受けて賛成した。社民党はこの修正を一歩前進と評価するが、改憲への呼び水という改正法の役割を変えるものとはいえないことから賛成はできない。
- 今回の改正法案は、2016年に累次にわたり改正された公職選挙法(名簿の閲覧、在外名簿の登録、共通投票所、期日前投票、洋上投票、繰延投票、投票所への同伴)の7項目に改憲手続を符合させ、憲法改正国民投票の際の有権者の投票機会を増やすことが目的とされている。地域をまたぐ「共通投票所」を駅や商業施設に設置できるようにしたり、洋上投票や期日前投票を拡充し、親とともに投票所に入れる子どもの対象も広げる。
- 公職選挙法にあわせた技術的な改正に見えるが、期日前投票時間の短縮や、繰延投票期日の告示期限が短縮されているなど投票環境を後退させる部分があること、またそもそも国の根本規範を決める憲法改正国民投票が公選法並びでよいのか十分議論する必要があるのではないか。CM規制、資金の上限規制、最低投票率の問題など、憲法改正国民投票の公正を保障する内容も含まれておらず、多くの課題が積み残されている。
- 改正案は自公と維新などが2018年6月に国会に提出し、今国会まで8国会にわたってで継続審議となっていたものだ。菅政権発足後の20年11月に実質的な審議に入ったが、いまコロナ禍のなかで成立を急ぐ必要はまったくない。菅義偉首相はこの5月3日のビデオメッセージで「(改正案を改憲に向けた)最初の一歩として成立を目指していかなければならない」と主張しているが、今回の改正を改憲論議に結びつけようとしているに過ぎない。
- 与党は議論は尽くされたとして会期内の成立を目指す方針だが、CM規制、資金の上限規制、最低投票率の問題など、憲法改正国民投票の公正を保障する議論はまったくなされていない。新型コロナウイルス禍が政府の対策の不備もあり深刻さを増しているなかで、いま政治がなすべきことは、日本国憲法が保障する権利、とりわけ健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(第25条)や法の下の平等(第14条)を基盤とする新型コロナ対策を組み立てていくことではないか。社民党は幅広い人々と連帯しながら参議院での審議を通じて、憲法改正国民投票法や今回の改正の問題点を厳しく指摘していく決意である。
以上