社会新報

【主張】安保3文書改定~戦争する国家への変貌を許すな

(社会新報1月11日号3面より)

 

 岸田政権が敵基地攻撃能力の保有や5年間で防衛関連予算を倍増させる方針などを明記した安保関連3文書を閣議決定した前日の12月15日、「戦争ではなく平和の準備を〝抑止力〟で戦争は防げない」とする提言が公表された。青井未帆学習院大教授と川崎哲ピースボート共同代表を共同座長とする「平和構想提言会議」がまとめたもの。
 提言は「3文書改定は、日本の安全保障政策を根本的に変更し、自ら戦争する国家に変貌する」と強く批判。その上で「朝鮮半島の平和と非核化に向けた外交交渉を再開させる」ことなど、日中・日朝関係の改善や敵基地攻撃能力を持つ兵器の購入、開発の中止などを「今後の課題」に挙げている。
 現在進んでいる事態に強い危機感を抱く研究者や市民活動家のメッセージであり、思いを共有したい。
 「戦争する国家」づくりに突き進む人々は、反対の声を抑え込むために差別排外や歴史修正をあおりながら、戦争への道を正当化し、平和を願う人々を萎縮させようとしている。戦争モニュメントの説明版が撤去されたり、書き換えられたり、議会で防衛費を「軍事費」と発言したら取り消しを求められるなどの動きが全国各地で起きている。もちろん、私たちはこうした動きに負けることはできない。
 被団協(日本原水爆被害者団体協議会)の機関紙『被団協』の1月6日付号の1面は原爆投下から10年後の1955年8月6日に発行された句集『広島』の「編者のことば」が飾った。
 あの日を永遠にとどめよう。
 忘れ去られることのないようにーー。
 忘却が生むおろかな反復によって、ふたたび、地表の亀裂に、おびただしい血が流しこまれることのないようにーー。
 消えやらぬ数々の戦慄の記憶と、深い深い慟哭(どうこく)を、ここに刻みこんで遺そう。
 同時に、力強い平和へのうたごえを、ここにぎっしり詰め込もう。
 とめどない涙も、ここにひとつの底光る決意として象嵌(ぞうがん=はめこむ)するのだ。平和のためにーー。
 句集が発行されて70年近くが経過しようとしているが、この「編者のことば」を被爆者組織がいま取り上げた意図は明らかだろう。今に生きる私たち一人ひとりに、「底光る決意」が求められている。

 

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