
満田さんが締めくくりのアピールで、アジア開発銀行に対して原子力支援の融資をやめるよう訴えた。

モーガンさん

ピーターセンさん
核兵器や原発の燃料の原料となるウラン採掘や原発から出る廃棄物は常に社会の弱い立場の人々を苦しめてきたーー。環境NGOの「FoE Japan」が10月10日、都内で集会を開き、米国先住民族のレオナ・モーガンさん、南アフリカの活動家リディア・ピーターセンさんが講演した。
「原子力と人権」と題されたこの集会には、会場となった衆院第二議員会館に40人、オンラインで280人が参加した。米国先住民族ナバホ族出身のモーガンさんは「ナバホ族の伝統的な土地(ディネビケア)では、ウラン採掘により深刻な環境汚染と健康被害が発生している」「核植民地主義に終止符を」と訴えた。モーガンさんによると、米国のウラン鉱床は米国西部、特に先住民族であるネイティブ・アメリカンの居住地に多いのだという。
「米国では1940年代から80年代にかけて最初のウラン生産の大きな波が起きた。その間、われわれの土地ディネビケアはウラン採掘のために激しく採掘され、母なる大地はじゅうりんされた。今日もなお、ウラン汚染はわれわれの大地、水、空気、動植物、そして人々を放射能で汚染し続けている」
先住民の土地を汚染
採掘後のウラン鉱山などによる環境汚染の回復がなされていないことは大問題だとモーガンさんは語る。
「ディネビキアには500以上の放棄されたウラン鉱山が存在する。われわれの民はコミュニティと未来の世代のために土地と水源の完全な回復を求めている。しかし、連邦政府は廃棄物を封じ込め土で覆い隠すだけだ。新たに植えた植物は以前と同じようには育たず、新たな砂の層が風で吹き飛ばされることが多発している。ウランを加工していた精錬所がいくつも残っていることも深刻だ。ウラン精錬所は水を大量に消費し、放射性廃棄物を生み出す。米国政府による不十分な浄化と管理のため、これらの古い精錬所は現在も土地と水を汚染し続けている。現在稼働中の精錬所は1ヵ所のみだが、少なくとも2ヵ所の新たなウラン精錬所と多数の新たなウラン鉱山開発が計画されている。ウラン汚染により健康被害が引き起こされている。自己免疫疾患、腎臓病、呼吸疾患、生殖機能障害など、周辺住民は、さまざまな病気に苦しんでいる」
そして、「原発も核兵器も、ウランを使うことには変わりない」と指摘。「ウランを土の中にとどめておくことが大事だ」と指摘した。
チタン採掘裁判勝利
続いて、ピーターセンさんが発言。「南アフリカには豊富なウラン埋蔵量があり、その近くにある農村部や先住民コミュニティの声は無視されがちだ」と述べ、現地での抵抗について紹介した。
「ウランではないが、南アフリカのワイルドコーストという場所では、地元のコミュニティがチタン採掘に反対した。彼らは裁判所に訴え、事前に適切な話し合いが持たれなかったと主張し、裁判所は住民の権利を認めた。ウラン採掘での意思決定に対しても素晴らしい先例となった」
またピーターセンさんは「特に若者たちは、活動や情報共有において重要な役割を担うべきだ。なぜならば、彼らが過去について学ぶことによって、過去の過ちを再び繰り返さないことができるからだ」と強調。「大学は研究、教育を通じて若者の参加を支援できる」と述べた。
ADBは融資やめて
集会の締めくくりとして、FoE Japanの満田夏花さんは、日本が多額の出資をしている世界銀行とアジア開発銀行(ADB)による途上国への原発建設支援の動きについて解説。「これらの金融機関は核拡散や安全性などのリスクがあるとして、これまで原発への支援はしてこなかった。ところが、世界銀行は今年6月の理事会で、原発融資に向かうという報道が流れた。ADBも原子力への支援を解禁しようとしている」として、「ADBのエネルギーの予算が全部、原発に使われるぐらいの規模だ。これは国際的につながり合って阻止しなくてはいけない」と署名活動への参加を呼びかけた。
集会には社民党の福島みずほ党首など各党の議員が参加した。