(社会新報2021年11月17日号3面より)
「第58回護憲大会」が10月30、31の両日、「大震災から10年!防衛より防災!共に生きる確実な明日へ」をテーマに仙台市内で開催された。主催は同実行委。
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初日の総会の冒頭、あいさつに立った大会実行委員会委員長の勝島一博・平和フォーラム共同代表は、2012年末に成立した第2次安倍晋三内閣と菅義偉内閣が戦争法や土地規制法等の憲法を破壊・空洞化する法案を強行採決で次々と成立させる一方、コロナ対策で混迷し医療崩壊を招いている現状を批判した。
また「岸田文雄新内閣も引き続き改憲路線を継承する構えだ。これまで改憲を阻止してきた成果を共有しながら、立憲主義と平和主義を回復するため運動を強めよう」と呼びかけた。
福島党首メッセージ
社民党の福島みずほ党首の「コロナ禍に国民が苦しむ中で軍備増強路線に走り、南西諸島の軍事化を進めている岸田政権を許してはならない」とするメッセージも紹介された。
続いて、「被災地の今と基本的人権」をテーマにした第一部のシンポジウム。最初に地元紙『河北新報』報道部の震災班から高橋鉄男記者が、「東日本大震災時の都市型避難所の状況」と題して報告した。
高橋さんは、2011年3月11日の大地震の際、公立学校を中心とした288ヵ所の避難所に被災住民や帰宅困難者ら10万人以上が押しかけて混乱したことを振り返り、「行政が完全にマヒし、パニック状態だった」と述べ、「大災害時に行政が全ての避難所に人員を配置するのは困難。どうしても住民の自助努力が求められざるを得ない」と結論づけた。
次に、NPO法人「イコールネット」の宗片恵美子代表が、当時の避難所で女性が直面した問題を、調査を基に紹介。運営リーダーが男性で占められるため女性の声が通らず、プライバシーも配慮されないため、セクハラも発生したなどの訴えがあったと指摘した。
震災後の農業経営は
「食・緑・水を創る宮城県民会議」の工藤昭彦会長は、「農業の復興から見た仕事の再建」と題して、震災後の農業経営の状況について報告。これまでに岩手・宮城・福島の3県で沿岸部を中心に東京ドーム約1万2000個分の5万7308ヘクタールの農地が休耕・放棄に追い込まれ、7万以上の経営体が喪失したことを明らかにした。
さらに国や宮城県、仙台市の農業復興計画が、いずれも大型化、低コスト化、競争力重視の農業を目指していると指摘。「大規模経営体になることを条件に復興交付金が支給されたが、20年で打ち切られた。今後は大型機械などの更新費用が過重になり、経営の困難化が予想される。今後は多様な農家・経営体が参加できる共生・共同・共創の農業が復興の主体となるべきだ」と強調した。
最後に、宮城県護憲平和センター理事の武田貴志弁護士が、「住まいの再建」について報告。同県だけで地震や津波による住宅の全壊が8万3004軒、半壊が15万5130軒に達したこと、19年までに大半が仮設住宅から退去したが、住宅再建を断念して賃貸住宅に移ったり、新たに住宅再建費用を抱えたりして二重ローンに苦しむなどのケースが見られることなどを説明。「支援金制度が不十分だ。住宅の再建を地域コミュニティーの課題として取り組むべきだ」と訴えた。
「国民投票法」の問題点
シンポジウムの第二部のテーマは「改正国民投票法の問題点」。初めに神奈川平和運動センター代表の福田護弁護士が今年6月に成立した同法について解説し、「公平と公正が手続きの絶対条件となる」と強調した上で、同法の附則で法施行後3年をめどとして明記された、テレビ・インターネットの有料広告の規制と最低投票率の確定などに関する検討と必要な措置が実施されるまで、国民投票を実施すべきではないと訴えた。
次に、名古屋学院大学の飯島滋教授が「ドイツではヒトラーが侵略を正当化するために悪用された経験から禁止されている」として、国民投票それ自体が有する危険性を指摘。さらに「国政選挙と違い、改憲をめぐる投票は1回やったら後はないのに、このままではカネに買われた投票になる」と、広告規制をしないまま自公政権が国民投票を強行する事態に警戒を促した。なお今大会では、護憲・平和運動への功績を讃える「遠藤三郎賞」が、「原子力空母の母港化に反対し基地のない神奈川をめざす県央共闘会議」と神奈川県の「三浦半島地区労働組合協議会」の2団体と、沖縄平和運動センターの山城博治前議長に贈られた。
↑勝島実行委員長。
↑護憲大会の総会の模様(仙台市)。