お知らせ

福島みずほ、半生を語る。議員生活25年、その原動力と知られざるエピソード

17.亡き両親への思い

私は宮崎で生まれ育ちましたが、本籍は祖父母がいた熊本にありました。祖父母がハワイに移住しているときに父が生まれたのですが、祖父が亡くなってしまい、祖母が父を産んだ後、子どもたちを連れて熊本に引き上げてきたのです。

 

父親は特攻隊の生き残りで、普段は少し怖い存在なんですが、子どもの頃、8月15日の終戦記念日のニュースに泣いていて、驚いたことがありました。

祖母は熊本大学の台湾人留学生相手の下宿をやっていました。サンフランシスコにいた祖父の弟が、日系アメリカ人の強制収容所に入れられていたこともあります。そういったバックグラウンドが、私の中で外国人差別問題への取り組みにつながっています。アジアからの出稼ぎ女性の緊急避難所「女性の家HELP」の協力弁護士や、入管法の問題などです。

 

母の愛は深かったですね。母は交通事故で子どもが亡くなる現場に遭遇したことがあり、朝、「行ってきます」と家を出ていく時に、毎日、「車に気をつけてね」と言って心を込めて見送ってくれました。母は寡黙な良妻賢母タイプだったのですが、20歳になった時に、「あなたはどこか骨のある女だから、思う存分生きていきなさい」と言ってくれたんです。その後の人生で魔法の言葉のように、何度も元気づけてくれました。

弁護士になって、議員になって、両親はすごく応援してくれていました。故郷の宮崎で講演や街頭演説をすると、両親が飛んできて、一番前で聞いてくれる。「ヒィー」と思いながら話していましたね。

 

母は絵を描いていて、二科展に何度も入選していました。とても力強くたくましい絵を描くんですよね。議員会館の部屋には母の絵を飾っています。父も母も亡くなってしまいましたが、母の絵に囲まれ、とりわけ母親がずっと見守ってくれているような、近くにいて常に会話をしているような気がしています。

 

 

もし私がどんな境遇になっても、母の愛情は変わらない。そんな人でした。

私も娘にこう言ったんです。「もしあなたがなにか間違いを起こしても、どんなことがあってもあなたに会いに行くからね」と。そうしたら娘も「ママももし逮捕されたら、変装してでも会いに行くね」と。

肩書きや経歴や実績がどんなに素晴らしくても、そうでなくても、大きな過ちを犯したとしても、世界中が敵になったとしても、掛け値なしに存在そのものを愛する。そんな愛が、私の財産なのかもしれませんね。

 

「1人でも生きられる。でも一緒に生きたいね」。私の好きな言葉です。

 

 

18.これからの世代へ、法律と政治ができること

内田樹さんと対談した時、内田さんがこんなことをおっしゃっていたんです。「教育を語る語彙は、その時代の基幹産業で用いられる語彙が流用される」。

つまり、昔は子どもって農業製品のように語られ、工業の時代には工業製品のように、最近になって金融商品のように語られるようになったと。確かに少子化対策や子育て支援と言うけれど、労働力とか、将来の高齢社会を支えるためにとか、リターンを目的にした投資のように語られるようになってきました。

 

でもそうじゃないと私は言いたい。あなたはあなたとしてそこにいるだけで、私はあなたのことを愛しているし、あなたがどうなろうと私の愛情は変わらない。そして政治はあなたに投資するのではなく、あなた自身が自分の良さを見つけたり、あなたの生きづらさを解消したりすることをお手伝いしたい。全ての子どもたちに、そう伝えたいです。

子どもたちみんなが幸せだと思える子ども時代を送ることができたらこの社会は変わるし、そういう社会にしたい、そう本気で思っているんです。

 

議員になって実現できたこともたくさんありますが、思っていたことの本当に一部なんです。やっぱり憲法9条を改悪させないことは最後まで自分の仕事だと思っています。

選択的夫婦別姓や同性婚など、様々な人権問題を解消して、整理して、包括的差別禁止法をつくらなきゃ。そして脱原発の実現。インフレで広がる格差拡大と貧困問題にも取り組みたい。経済成長、新自由主義の先の、環境問題や気候危機、食の安全といった課題への関心も高まっていますよね。

 

まだまだやらなきゃいけないことがあります。どんどん仲間を増やしていきたいです。いろんな個性とバックグラウンドを持って、いろんなアクションを起こしている皆さんと一緒に、社会課題の解決に頑張っていきたいです。

例えば選択的夫婦別姓や同性婚は、生き方の選択肢を拡大すること。実現したからって、誰かが不幸になるわけでもないし、生きやすくなる方が増えるだけですよね。

ニュージーランドで同性婚を認めるために、現地で国会議員がこのような演説をしたんです。「別に同性婚を認めても、あなたの人生は変わりません。太陽が西から昇るわけではありません。太陽は変わらず昇り続け、幸せになる人が増えるだけじゃないですか」。まさにその通りですよね。

若い人たちを中心に、「男女平等は当たり前」という人や、LGBTQへの理解がある人が増えてきて嬉しいです。政治も時代も悪くなってきている面もあるけれど、気持ちが優しい人たちは増えているんじゃないかな。国会の中でも、生理や避妊、中絶といった話題も出しやすくなりました。若い世代の自由でフラットな感覚が政治を後押ししてくれています。

 

政治に関心のある、若い人たちのグループが選挙の時に私の事務所に来てくれました。うちの夫を見て、「みずほっちの彼氏!」って。そういう面白い感性を大事にしていきたいですね。

 

 

一時は減少傾向にあった自殺者数ですが、コロナ禍で女性の自殺者が増加に転じていて、とても懸念しています。子どもの自殺も増えています。2022年に自殺した小中高生は初めて500人を超え、過去最多になってしまいました。この生きづらい社会をなんとかしたい。

政治は生活と直結しています。政治はみんなのもの。あなたの弱音は、あなたの生きづらさは、あなたのしんどさは、政治の課題なんです。「自分のせいだ」と思っている人も多いかもしれないけれど、法律や制度をつくったり変えたりすることで、政治は明らかにあなたの「生きる」を応援することができる。

 

普通におしゃべりをするように、ぜひ生きづらさを話してみてください。弱音を吐いてください。一つひとつを政治の課題にし、一緒に解決していきましょう。法律も政治も、みんなが幸せになるためにあるのですから。

 

5ページへ