【護憲大会第2分科会】 「敵基地攻撃と日米関係」をテーマに半田滋さんが講演
(社会新報11月30日号4・5面)
11月13日、松山市内で開かれた護憲大会の第2分科会では、防衛ジャーナリストの半田滋さんが「敵基地攻撃と日米一体化」をテーマに講演。103人が参加した。
半田さんは、岸田政権が年内の安保3文書改定に盛り込もうとしている敵基地攻撃能力の保有について、次のように指摘した。
「敵基地攻撃といっても、そもそも自衛隊は70年以上、専守防衛でやってきており、北朝鮮や中国のミサイル基地が一体どの位置にあるのか分かっていない。北朝鮮は今回、数十回もミサイルを撃ったが、固定化した基地からは一度も撃っていない。移動式の発射台や潜水艦などから撃っている。自衛隊は米軍と違って偵察衛星を持っていないし、人的な諜報活動もできないから、敵基地攻撃能力といっても結局は米国の情報に頼るしかない」
半田さんは、敵基地攻撃能力の保有が求められる理由について、「朝鮮半島有事、台湾有事において、米軍の手先として自衛隊が役に立つということ。自衛隊が単独で北朝鮮や中国を攻撃する理由はないし、逆に北朝鮮も中国も日本を攻撃する理由はない。自衛隊が米軍と共に戦うから攻撃の対象になる」と指摘した。
また、抑止力を強めれば安全になるという考え方について「全く違う」と語った。
「軍事力を強めて抑止力を高めたとしても、相手がそのとおりに受け止めなければ、いくらでも戦争になってしまう。歴史が証明している。安全になろうとして軍事力を強めると、他国はそれを疑って軍事力を強化して、結局、地域が不安定化する。『安全保障のジレンマ』に陥ってしまう」
また、沖縄県が台湾有事に巻き込まれた場合、146万人の県民はどこに避難すればいいのかと疑問を呈した。
「国民保護計画に基づいて、沖縄県では1294ヵ所が避難場所にすでに指定されているが、どうやって逃げるのか誰も分からない。宮古島の場合、人口5万5000人が避難に必要なバスは1088台、航空機が363機、船舶が109隻。これほどの交通手段を一度に動員できるのか。避難先と指定される沖縄本島までが攻撃対象となれば、どこへ逃げればいいのか」
その上で「結局、政府は、離島間の調整を含めて自治体に丸投げしている」と厳しく批判した。
そして、「離島の住民を安全に避難させることができないわけだから、台湾有事に日本は絶対に関わってはならない。戦争を起こさないこと以外に日本が安全に生きる方法はない」と強調した。
その上で、「日本は経済的にも、外交的にも、国際的影響力を低下させている。その状況下で日本がなすべきは、韓国やASEAN(東南アジア諸国連合)諸国などのアジア域内国、英国など欧州の域外国と連携して、米中に戦争回避を訴え続けることだ」と訴えた。
最後に、半田さんは「1人の日本人も死なせない、1人の外国人も殺さない。これは日本国憲法の精神であり、軍事力ではなく外交力を展開する時だ」としめくくった。