
京都事件で完全無罪判決を勝ち取った湯川委員長が支援に感謝の言葉を述べた。(4月11日、参院議員会館)

社民党の大椿副党首が集会に駆け付け、戦後最大の労働組合弾圧である関生支部の事件を国会で厳しく追及していくと連帯のあいさつ。
「京都事件無罪判決と国賠訴訟の今後」と題する院内報告集会が4月11日、参院議員会館で開かれ、70人が参加した。「関西生コンを支援する会」(共同代表・鎌田慧さんら)が主催した。
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(関生支部)への弾圧事件は、2018年以降、81人の労組員が逮捕され、66人が起訴された。4府県警の公安警察に加え組織犯罪対策課(暴力団対策チーム)が捜査に乗り出し、ストライキなどを恐喝行為と見立て、正当な労働組合活動を犯罪扱いして弾圧した。
武建一・前委員長は逮捕6回、641日の勾留、湯川裕司・現委員長は8回逮捕、644日の勾留の「人質司法」弾圧を受けた。
ストライキを「恐喝」扱いの無理筋の捜査 次々に無罪判決
一連の裁判で無罪判決が合計19人に言い渡され、そのうち無罪確定は11人に達した。有罪率99・9%と言われる日本の刑事裁判で、無罪判決が続出する前代未聞の展開となった。
院内集会では、今年2月26日に京都地裁の完全無罪判決を勝ち取った湯川委員長が支援への感謝の言葉を述べた上で、「弾圧によって気付かされたことは、権力側が産業別労働組合を潰すために体制を強化しているということ。産業別労組は身分に関係なく同一賃金・同一就労を実現するもの。弾圧をしっかりと乗り切り、産業別労組が主流になるよう、根付かせていきたい」と訴えた。
大椿副党首が国会で厳しく追及
大椿ゆうこ社民党副党首(参院議員)が駆けつけ、「戦後最大の労働組合弾圧である関生の事件を国会で厳しくただし、関生支部の皆さんをしっかり支えていく。この闘いは憲法28条(団結権など労働3権)を生かせるかどうかが問われている」と熱い連帯のあいさつを行なった。
続いて、関西生コン弁護団の中井雅人弁護士は、京都地裁が無罪判決を出した「京都事件」を解説した。同事件は、ベスト・ライナー事件など4つの事件で構成される。武・前委員長と湯川・現委員長の2人が恐喝などの容疑で起訴された。
中井弁護士か京都事件を解説 ベスト・ライナー事件とは
ベスト・ライナー事件の経緯をたどるとーー。1997年、京都生コンクリート協同組合(京都協組)が労働組合対策で設立した会社ベスト・ライナーは、2002年に関生支部の分会が結成されると、断交を拒否して組合員全員を解雇。関生支部は、京都協組加盟の生コン業者5社でストライキを実施し、解雇は撤回された。京都協組は13年、解決金を支払うからベスト・ライナーの企業閉鎖を認めてほしいと関生支部に申し入れる。関生支部は解決金だけではなく京都協組による雇用保障が必要と回答。雇用保障を明記した労使協定が締結されたが、京都協組は履行しようとしない。そのため、14年、京都協組加盟5社が3波にわたるストを決行し、京都協組はようやく協定を履行し、争議は解決した。
検察側は、こうしたストや解決金要求行為が「人を畏怖させる」脅迫行為に該当するとして、武、湯川両被告に殺人事件並みの懲役10年を求刑した。
京都地裁判決は労働法理をきちんと踏まえ、「そもそもストライキをはじめとする争議行為は、労働組合が使用者に一定の圧力をかけ、主張を貫徹することを目的とする行為」であるとし、脅迫には全く当たらないとして検察の主張を一蹴(いっしゅう)した。
海渡国賠弁護団長が異常な捜査体制を批判
続いて、国家賠償請求訴訟弁護団長の海渡雄一弁護士が、一連の弾圧は、警察庁が主導し、滋賀県警、大阪府警、京都府警、和歌山県警が連携する異常な捜査体制であったと指摘し、警察と検察が産業別労組の意味を全く理解せずに、「重大な過誤があった」と厳しく批判した。国賠訴訟の最終弁論が6月26日(木)14時から東京地裁103号法廷で予定されており、海渡弁護団長は多くの傍聴者が集まるよう呼びかけた。
小谷野毅・全日建書記長は刑事事件の進行状況について無罪判決が次々に出され、流れが変わったと指摘し、今後の公判日程などを報告した。また、不当な弾圧を受けてきた韓国建設労組との共同声明を6月初めに発表すると述べた。
最後に菊池進全日建委員長が閉会あいさつで、残る全ての裁判で無罪を勝ち取るため、引き続きの支援を呼びかけた。