日中友好こそ最大の安全保障~「日中共同声明」50周年記念集会は大盛況
(10月12日号1面より)
今から50年前の9月29日、当時の田中角栄首相と周恩来総理は北京で日中共同声明に署名し、日中国交正常化・台湾断交が成立した。この功績を振り返る日中国交正常化50周年記念大集会が9月28日、院内で開かれ、300人が参加した。村山富市元首相がビデオメッセージを寄せ、鳩山由紀夫元首相をはじめ楊宇・中華人民共和国駐日首席公使ら、多彩な顔ぶれが出席した。
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まず、主催者を代表して、「村山談話を継承し発展させる会」の藤田高景理事長があいさつ。米国の言いなりとなって防衛予算を拡大し、反中国包囲網を突き進む日本の現状を批判した上で、「今や中国は最大の貿易相手国であり、戦う相手ではない。本来の友好関係を取り戻すことが国益であり、安全保障になる」と訴えた。
村山談話の意義を強調
続く来賓あいさつでビデオメッセージを寄せた村山元首相は、1995年の「村山談話」でのアジア侵略戦争への反省に触れ、「日中友好はアジアの平和の礎」として「日中の末長い良好関係が両国の発展につながる」と訴えた。また鳩山元首相は、国交正常化を優先して棚上げした尖閣諸島や台湾といった問題に触れたことが両国の緊張を高めていると指摘した。
楊公使は、日中関係がいま重大な局面にあると懸念し、「互いに脅威ではなくパートナーであるという道から外れないよう努力することが大事だ」と強調。日本には米国だけでなく中国との約束も守るようバランスを求め、人々が行き交うためのよりよい環境をつくり、共通利益を拡大することこそ重要だと述べた。
政治評論家の森田実さんは、「米国に対する日本の〝自発的隷従〟が日中友好改善の前に大きく横たわっている」と危機感を表明し、国交正常化50年の総括を求めた。
青山学院大学名誉教授の羽場久美子さんは、中国に覇権を脅かされている米国が台湾有事を推し進めるのは、欧米支配の継続のためであり、東アジアの発展のためではないと警鐘を鳴らした。欧米から武器の支援を受けるウクライナの現状を東アジアに照らし合わせ、米国の最新兵器が集まる沖縄が台湾有事の際の最前線になる可能性を指摘。羽場さんは、むしろ沖縄で東アジア各国の市民が集まって東アジアの平和を話し合うプロジェクトを提案した。
また「中国文化財返還運動を進める会」共同代表の東海林次男さんは、日清戦争以来、日本にある「戦利品」について解説し、文化財の返還によって少しでも日中友好を進めていきたいと語った。
来賓紹介を受けた社民党の服部良一幹事長は「野党議員としても日中友好の架け橋となれるような動きをつくっていく。敵基地攻撃能力の保有が防衛3文書に書き込まれるのを絶対に阻止しなくてはいけない」と意欲を語った。
共同声明の初心に戻る
集会後半では、広島平和研究所元所長の浅井基文さんが「9条および声明・条約の初心に戻ろう」と題して記念講演を行なった。
浅井さんは、日米中の関係の根底にあるのは台湾問題であり、米国のその認識によって関係は大きく左右されると述べた。1972年2月、当時のニクソン米大統領が訪中して上海共同声明を発表したことに触れ、この声明で米国は台湾が中国の一部であることを認めたわけではないが、中国と話し合う関係になったことを解説。
当時の日本はサンフランシスコ講和条約に則した国交正常化を求めており、日米安保条約を基本にし、台湾の帰属は未決ということだったと指摘。米中が接近したことと、中国が対日要求を歴史認識と台湾、覇権の3点に絞ったことで敷居が低くなり、日中国交正常化が実現したと述べた。
台湾有事を起こさない
ただ逆に言えば、米中関係が険悪になれば、日米安保体制の中国に対する敵対的な性格が表に出て、台湾有事で米国とともに中国と対立するということが可能になると、浅井さんは注意を喚起した。
その上で浅井さんは、日中共同声明を踏まえて日中平和友好条約も交わした日本こそが、米国の覇権主義を否定するとともに、中国に対して台湾問題で事を起こしてはならないと促すべきと強調した。
最後に日中労働者交流協会の伊藤彰信会長が閉会あいさつに立ち、「いま違いを強調し対立をあおる傾向にあるが、日中共同声明前文の最後にあるように、社会制度の相違があっても平和友好関係をつくることはできるという考え方こそ大事ではないか」と訴え、集会を締めくくった。
(メモ)【日中共同声明】1972年9月29日、日本と中華人民共和国が共同声明に調印したことによって成立した。声明では、戦争に対する日本の反省、中華人民共和国政府を中国唯一の合法政府として承認することや、台湾が中国の一部であることの尊重、中国の日本に対する戦争賠償請求の放棄、紛争の平和的手段による解決や武力による威嚇をしないこと、覇権を確立しようとするいかなる国の試みに反対すること、日中友好平和条約の締結を目指すことなどが盛り込まれた。