(社会新報2021年4月14日号2面より)
「核のない北東アジアを!」。社民党北東アジア平和構築プロジェクトチーム(山城博治座長)は3月30日、衆院第2議員会館でPTのスタート企画としてシンポジウムを開催。オンライン視聴者も含め60人が参加した。金子豊貴男相模原市議が司会、山城さんがコーディネーターを務めた。パネリストは在日韓国研究所代表の金光男さんとNPO法人ピースデポ代表の湯浅一郎さん。米兵によるレイプ被害を告発したオーストラリア人のキャサリン・ジェーンさんが特別報告を行なった。
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金光男さんは朝鮮半島平和プロセスと東アジアの平和体制構築というテーマで語った。開口一番、「私は日本に絶望しているが、一つだけ希望がある。それはここに集まった社民党の皆さんだ」と述べた。
朝鮮半島の非核化を
金さんは東アジアがますます不安定な状態にある理由として、第1にバイデン米政権の外交政策が中国を最大の脅威、競争相手とみなしたこと、第2に「自由で開かれたインド太平洋戦略」の名の下に日本・米国・インド・オーストラリアの4ヵ国でつくる非公式なクアッド安全保障協議体が中国包囲を目指していること、第3に朝鮮戦争が71年間も休戦状態のままであり、南北の軍事力がにらみ合いを続けていることを指摘した。
金さんは続けて、2017年にキャンドル革命によって誕生した文在寅政権が今日まで実現の努力を重ねてきた朝鮮半島平和プロセス構想について解説。その内容を、①朝鮮半島の非核化を実現、②停戦協定を平和協定に転換する恒久的な平和体制の構築、③朝米・朝日の国交正常化、④北東アジアの多国間安保協力による朝鮮半島の冷戦構造を終わらせるものと整理した。
18年に韓国政府の仲介により史上初めての米朝首脳会談がシンガポールで開かれ、朝鮮半島の非核化を目指す共同声明を発表されたことについて、「合意された内容は、北朝鮮の非核化ではなくて朝鮮半島の非核化だ」と強調。その上で、「朝鮮半島の非核化が実現すれば南北が核兵器禁止条約に加入することが可能になり、核兵器を保有しない南・北・日本・モンゴルの非核地帯化条約の締結も視野に入ってくる」と指摘した。
次いで湯浅一郎さんが発言。1月22日に発効した核兵器禁止条約(以下、TPNW)について、「TPNWの第1条は、核兵器の開発、実験、生産、製造、保有、貯蔵、移譲、使用および使用の威嚇を禁止し、さらに禁止されている行為を援助したり、奨励・誘導したりすることも禁止している。つまり、『核の傘』依存政策をも禁止している」と語った。
核禁条約発効で変化
続いて核軍縮の国際的議論の変化について、「これまで核不拡散条約(NPT)再検討会議と国連総会第1委員会で行なわれてきたが、今後はもう一つ、TPNWに基いて2年ごとに締約国会議が開かれる。2つのトラックが並行して走る時代になる」と述べた。
また湯浅さんは、「TPNWが発効しても『核兵器のない世界』が自動的にやってくるわけではない。米ロ英仏中などの核保有国はTPNWに強く反対している。核兵器の廃絶は、保有する国が自分の意思で核兵器をなくしていかない限り実現しない。核保有国は、今後も保持することを前提に保有核戦力の近代化を続けている」と状況の厳しさを指摘。その上で、「核兵器の非人道性と違法性に関する認識が世界的に広がり、これまで以上に使いにくくなるはず。国際法で禁止された核兵器に自らの安全保障を依存する核兵器国や日本を含む核兵器依存国のありようが倫理的に問われる。とりわけ唯一の戦争被爆国・日本のありようが強く問われる」として、国際環境が変化する可能性を指摘した。
日本政府は「唯一の戦争被爆国」を自認しながら、TPNWに関しては「現状の安全保障環境を踏まえずにつくられたものであり、批准できないし、原則的支持表明もできない」としている。湯浅さんは、「そうであるならば、まずは18年の南北、米朝の首脳合意を生かして安全保障環境を改善していく外交努力をすべきだ」と強調した。
その上で、「TPNWが発効した今こそ、非核三原則を持つ日本は、北東アジア非核兵器地帯構想を打ち出すべき時だ」と訴えた。
続いてPT座長の山城博司さんが発言。「辺野古新基地建設に抗議し、運動しているが、沖縄だけで解決するものではない。北東アジアの非核化と安全保障の環境改善が見えない限り、沖縄の軍事基地化は今後もやまないだろう」と述べた。
最後に、米兵によるレイプ被害を告発したキャサリン・ジェーンさんが、「私は米兵からレイプされた時、被害者は私一人だと思っていた。ところが調べていくうちに、沖縄で無数の女性たちがレイプ被害を受けていたことを知り、大変ショックを受けた。日米地位協定を見直さなければならない」と訴えた。