社会新報

【主張】「トランプ関税」の横暴を許すな ~ 日本政府は撤回を求め全力で対米交渉を

(社会新報4月17日号より)

 

 1930年代の世界恐慌下、保護貿易主義と高関税に傾斜したことが第2次世界大戦開始の一因となった。戦後、その反省に立って世界は自由貿易を推進してきた。今回の「トランプ関税」は世界を保護貿易主義に逆戻りさせ、米中の貿易戦争に陥らせた。

 トランプ米大統領は2日、貿易相手国に一律10%の関税を課す「相互関税」の導入を発表し、5日に発動。3日から品目別追加関税を発動し、自動車に25%の関税を課した。9日には国・地域別に税率を上乗せする関税を発動し、日本に24%の関税を課した。ところが同日午後、発動したばかりの上乗せ「相互関税」について、日本などの国・地域で90日間停止すると発表。方針が次々に変わった。

 一方、報復措置を打ち出した中国に対しては、関税をなんと125%に引き上げる。米中による報復の連鎖で、貿易戦争に突入した。

 トランプ大統領は「相互関税」導入の理由として、各国が非関税障壁などで自国産業を保護しているため米国製品が各国内で売れず、米国の貿易赤字が拡大したと主張。日本への追加関税について、コメに700%もの関税を課していることなどを理由に挙げているが、700%とは日本が20年前の国際交渉で示した数字で、現在は全く違う。24%の追加関税の計算についても、米国内のシンクタンクは計算方法がでたらめであると指摘する。

 国別に異なる関税を課す2国間協議は、強い国が関税を武器に相手国へ脅しをかける愚行だ。自由貿易は、すべての国を同様に扱う「無差別」が原則であり、多国間協議の合意形成を堅持しなければならない。

 2月の日米首脳会談で、日本側は対米投資額を1兆ドル(約145兆円)に引き上げることや、米国産LNG(液化天然ガス)の輸入拡大、軍拡路線の継続など、低頭平身で対米追随の外交をしたにもかかわらず、トランプ大統領は理不尽にも日本に高関税を発動した。日本への上乗せ関税は90日間停止となったが、撤回されたわけではない。一律10%関税と自動車関税25%は維持されたままだ。「トランプ関税」による自動車産業などへの打撃、物価高と貧困化の加速などへの対策は急務である。食料品消費税を即時ゼロにするなど大胆な経済対策を打つべきだ。日本政府は、国際ルールを無視した「トランプ関税」の横暴を許さず、撤回を求めて全力で対米交渉をすべき時だ。