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福島みずほ、半生を語る。議員生活25年、その原動力と知られざるエピソード

13.民主主義が音を立てて崩れていった瞬間

政治活動の中では、心底悔しく、残念なことがたくさんありました。

教育基本法の改悪、盗聴法(通信傍受法)と秘密保護法、戦争法案(安保法制)と関連法など……政治権力による国民の表現の自由や知る権利、教育や報道、学問への介入が強まってきていることは、本当に問題だと思っています。

 

一番悔しかった瞬間は、やはり2015年、安保関連法・戦争法が強行成立したときです。憲法違反だと思っている法律が目の前で強行成立するのは絶対に許せなかった。参議院本会議で強行採決されたあの瞬間、民主主義がバリバリと音を立てて崩れていった気がしました。すっごく悔しかったです。

夜明けの朝霞になっても、まだ国会前で抗議している市民の方がいました。「悔しい。でも、負けないでまたこれからも頑張ろうね」と話したことを昨日のように思い出します。

 

 

14.「政治家は職業上の殴られ屋だ」

ドイツ社会民主党の党首も務めたオスカー・ラフォンテーヌさんの本に書かれていた「政治家は職業上の殴られ屋だ」という言葉が印象に残っています。私自身、色々なところでヘイトを向けられたり、事実と異なる情報を流されたりしたこともありました。

新聞のコラムで評論家が書いた虚偽の内容がそのまま掲載された時は驚きました。名誉毀損の訴訟を起こして、請求通りの賠償が認められました。

 

主張していることを全ての人に賛成してもらえるわけではないことも、もちろん理解しています。

辛い気持ちはできるだけ一晩で忘れるようにして、前を向いてきたつもりです。立場が違う方ともなんとか話し合ってわかり合いたいと思うタイプ。ですが、党内など、仲間うちで袂を分かつようなことが起こったときは、さすがにつらかったですね。これまでの仲間が、ある日突然いなくなっちゃうとか、党の存立基盤が揺らいだ時とか……。

 

 

15.動物愛護法、DV防止法の成立

これまで、やはり辛いことも裏切られたと思うことも、残念なことも、悔しいこともあったんですが、その何百倍、1000倍ものやりがいがあります。資料を要求したり、直接行政と交渉したり、実際に大臣に質問をして引き出したり、なんと言っても、夢物語ではなく、実際に法律を作ることができる。それは本当に、やりがいのある、わくわくするような仕事です。

 

 

動物愛護議員連盟の事務局長をつとめていて、5年ほど前から動物愛護法の改正法案をみんなで作りました。2019年、全会一致で成立し、さらに今度改正を目指しています。「こんな社会にしたいよね」ということを、具体的に前に進めていけるのが議員の仕事です。

 

印象に残っている仕事は、2001年に成立したドメスティックバイオレンス防止法です。1998年に初めて議員になり、プロジェクトチームができて、超党派の女性たちで議論しながら作ったので、とても思い入れがあります。

配偶者や生活を共にする交際相手からの身体に対する暴力を防ぐため、裁判所が加害者に対し、被害者へのつきまといなどをしてはならないという「保護命令」など新しい制度を作りました。2002年に施行し、今まで4回改正してきていますが、今度、5回目の改正ですね。

 

社会にある問題をなんとか解決したい、社会を変えたいと思ったときに、具体的に法律や制度を作ったり変えたりすることができるとかいうのは、すごくやりがいのある仕事です。私はラッキーだとも思います。 

 

 

16.競い合いながら、政党も超えて

去年の参議院選挙で、社民党は政党要件をかけた、本当に厳しい闘いになりました。

結果として、前回の参議院選挙よりも得票数が増えたんです。社民党が必要だと思ってくれている人が増えている。心強い仲間もいる。その事実は本当に励みになりました。「あなたの言っていることは正しい」と言って応援してくれた自民党の自治体議員もいました。

 

もちろん国会や選挙だと与党、野党同士で競い闘うことも多いのですが、政治の世界って、政党を超えてお互い100%、完全に意見が一致することはほとんどないんです。でもなんとか共通項を見つけて、「一緒にやろう」と共同会派を組んだり、議員連盟を組んだりして、いろんな課題解決に邁進してきました。

自民党の人とも議員連盟で一緒に取り組んでいるテーマは多いですよ。例えば参議院議長の尾辻秀久さんとは非正規雇用や優生保護法、自殺対策や過労死、動物愛護など、本当にいろんなテーマの議員連盟でご一緒してきました。

入管法、選択的夫婦別姓、LGBTQ、同性婚……さまざまな課題に対し、与党の人ともできるだけ共通項を見つけて、これからも輪を広げていきたいと思っています。

 

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